金無垢ロレックスは「有事の金」…資産価値が高い腕時計の条件

スマホや携帯が普及した今、わざわざ腕時計で時間を確認する人は少数だろう。しかし腕時計の売れ行きは絶好調だ。愛好家を増やし、ますます高級志向となっている。さらに近年は「高級時計オークション」が盛況だという。資産価値の高い腕時計とは、どんなものなのか? 時計ジャーナリストが最新事情を解説する。※本連載は、篠田哲生氏の著書『教養としての腕時計選び』(光文社新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

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最高落札額は約20億円…資産価値が高い「腕時計」

「有事の際には、世界中どこでも換金できる金無垢(きんむく)のロレックスが最強だ」。

 

これは有名な時計都市伝説の1つ。その真偽は不明だが、世界中で中古ロレックスが取引されているのは事実である。人気モデルなら定価+100万円という値付けも珍しくはなく、過去の傑作やレアモデルともなれば、数千万円という金額で取引される事例もある。

 

中でも有名なのが、ロレックスのクロノグラフ「デイトナ」の“ポール・ニューマンモデル”。これは1960年代初期から1970年代まで製作されていた“エキゾチックダイヤル”と呼ばれるタイプのもので、名優ポール・ニューマンが愛用していたことから、こういうあだ名で呼ばれるようになったもの。

 

どのモデルも超プレミア価格がついているが、ポール・ニューマン本人が使用していた“本物”が2017年のフィリップスオークションに出品された際には、なんと約20億円で落札された。これはアンティークウォッチにおける世界最高額である。

近年「高級時計オークション」が盛況

実は近年、こういった高級時計オークションが盛んに行われている。オークションを取り仕切るのは、サザビーズやクリスティーズ、フィリップスといった有名オークションハウスたち。

 

彼らは世界中のコレクターが所有する時計を集め、真贋を鑑定し、丁寧に修理して(ブランドに依頼する場合もある)、オークションを行う。そこには世界で一本しか作られなかったユニークピースや超有名人が愛用していた歴史的時計も含まれる。

 

こういった時計はコレクターが競り落とすだけでなく、ブランド側が落札して自社のミュージアムに所蔵する場合も少なくない。そのため希少で歴史的な時計は、価格上昇の傾向にある。

 

しかしながら、どの時計にも資産としての価値があるわけではない。ロレックスの中古価格が高騰しているのは、需要と供給のバランスが崩れているから。メーカーとして生産数には限界があるので、「どうしても欲しい!」という熱気が強まるとプレミアム化が起きる。それはレアスニーカーなどと同じ現象である。

 

こういった現象はロレックス以外では、なかなか起きにくい。というのも、時計界における雲上ブランドは、必ずしもロレックスほどの一般的な知名度を得ているわけではないからだ。たとえ生産数が少ない素晴らしい腕時計であったとしても、知る人ぞ知るブランドの場合は、欲しい!という人の絶対数も少ないのでプレミアム化しにくいのだ。

 

ではごく一部の腕時計以外は資産にならないのか? それはイエスでもありノーでもある。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

「資産たりうる腕時計」の条件

ロレックスは別格として、パテック フィリップやオーデマ ピゲ、A・ランゲ&ゾーネ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ブレゲといった雲上ブランド、あるいはリシャール・ミルやF・P・ジュルヌのような少量生産ブランドであれば、資産価値はさほど落ちないだろうし、希少モデルであれば資産価値が増すこともありうる。

 

しかしもっと一般的なブランドの場合は、投資のために購入することはお勧めできない。あくまでも自分とともに、時間を積み重ねていく対象として楽しむのがいいだろう。

 

とはいえ風向きが変わりつつあるのも事実である。識者によると、スイス時計における中古市場は、将来的には新作市場の25倍に達するだろうと見込まれているのだ。これは希少なレアピースではなく、もっと一般的な腕時計の中古市場が盛り上がるということ。そして中古腕時計の市場が活発化すれば、資産価値も高まるということになる。

 

ブランド側もこういった状況に敏感に反応しており、リシャール・ミルやフランク ミュラーでは、自動車のような「認定中古」というサービスを行っており、正規のメンテナンスサービスを行った後に正規店で販売している。

 

またカルティエを擁するリシュモングループは英国の中古時計の販売サイト「ウォッチファインダー」を買収しており、価格の暴落を避けるように中古価格をコントロールしようという動きが見えている。

 

つまり今後、中古市場で価格がしっかり安定するのであれば、腕時計は資産となりうるだろう。

 

 

篠田 哲生

時計ジャーナリスト、嗜好品ライター

 

 

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時計ジャーナリスト、嗜好品ライター

1975年生まれ。講談社「ホットドッグ プレス」編集部を経て独立。時計専門誌、ファッション誌、ビジネス誌、新聞、ウェブなど、幅広い媒体で硬軟織り交ぜた時計記事を執筆している。

また仕事の傍ら、時計学校「専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」のウォッチコース(キャリアスクールウォッチメーカーコース)に通い、時計の理論や構造、分解組み立ての技術なども学んでいる。スイスのジュネーブやバーゼルで開催される新作時計イベントの取材を、15年近く行っており、時計工房などの取材経験も豊富。

著書に『成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。』(幻冬舎)がある。

著者紹介

連載ビジネスパーソン必見!教養としての腕時計選び

教養としての腕時計選び

教養としての腕時計選び

篠田 哲生

光文社

そこかしこで時刻を確認することができる時代、人は何のために腕時計を身につけるのか? 今や時計はアートや音楽と同じように「教養」となった。 腕時計を成熟したビジネスパーソンの身だしなみ、あるいは「教養」として…

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