価格、知名度、デザイン性…デキる大人は「腕時計」をこう選ぶ

携帯電話やスマートフォンの普及により、腕時計は実用品から「自分自身を表現するツール」に昇華した。いまや腕時計は成熟したビジネスパーソンの身だしなみであり、ステイタスやセンスを示すものとなった。自分自身にふさわしい逸品を選ぶにはどうすればよいのか? 価格帯、知名度、デザイン性…時計業界の企業戦略に着目して解説する。※本連載は、篠田哲生氏の著書『教養としての腕時計選び』(光文社新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

時計のトレンドやスタイルを左右する3大グループ

ファッション業界では、ルイ・ヴィトンなどを擁する巨大ファッションコングロマリット「LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOËT HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)」と、グッチやサンローランを擁する「ケリング」の二大勢力が大きな影響力を持っており、ファッションビジネスの未来を決めている。

 

これは時計業界も同じ。時計業界ではリシュモン、スウォッチ、LVMHが有力グループであり、この3グループの戦略が時計のトレンドやスタイルに大きな影響を与えている。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

価格帯重視なら「スウォッチグループ」

世界最大の時計コングロマリットである「スウォッチグループ」は、スイス時計の近代史とも繋がっている。家族経営の小さな会社が多いスイス時計産業では、ビジネスを支えるために複数の時計会社が連帯していた。

 

その代表が1930年に発足したSSIHと翌年に発足したAUSAG。両社はスイス時計の冬の時代だった1986年に合併し、SMHグループを結成する。このグループのコンサルタントをしていたのが、ニコラス・G・ハイエック氏だった。

 

レバノン出身である彼は、スイスの時計文化に敬意を払いつつも、“スイス”という国のもつブランド力に注目し、低価格なプラスティックウォッチ「スウォッチ」を製作。その成功によって得た莫大な利益を使って古き良き時計ブランドを次々と傘下(さんか)に収め、そしてSMHグループを発展させる形で、1998年に「スウォッチグループ」が生まれる。

 

パリで活躍した天才時計師ブレゲの流れを汲む「ブレゲ」や現存するスイス最古の歴史をもつ「ブランパン」、ドイツ時計の歴史を継承する「グラスヒュッテ・オリジナル」、高精度時計の名門「オメガ」「ロンジン」など、合計18の時計ブランドを傘下に収めるスウォッチグループは、ブランドの個性を明確にした徹底的なセグメント戦略を行っている。

 

プレステージ&ラグジュアリーレンジ、ハイレンジ、ミドルレンジ、ベーシックレンジ、ときっちりセグメントを分け、価格帯をしっかりとコントロールすることでお互いのブランドの顧客を食い合わないようにするのだ。

 

その一方で中級セグメント以下ではグループ傘下のムーブメント会社「ETA」で開発した高性能ムーブメントを共用したり、傘下ブランドが開発した特殊な素材技術を他社に転用したりすることで開発コストを下げる。そのため価格以上の品質があるのは魅力である。

伝統、格式、実力を兼ね備えた「リシュモングループ」

スウォッチグループの対抗馬となるのが、1988年に設立された「リシュモン」である。創始者は南アフリカの企業家であり、たばこビジネスで財を成したヨハン・ルパート。パリの宝石商「カルティエ」、スイス屈指の技巧派「ジャガー・ルクルト」、理知的なデザインの「IWC」、ドイツの名門「A・ランゲ&ゾーネ」など、綺羅星のような名門や実力派の16ブランドを傘下に収めている(クロエなどのファッションブランドも含む)。

 

リシュモングループは、良い意味でグループ内ガチンコ主義。傘下のブランドはどれもがハイエンドで、歴史や格も高いので、価格帯も顧客も重なってしまう。真っ向勝負のライバル関係なのだが、その厳しい環境こそが時計の質を上げているともいえるだろう。

個性的でハイセンスな「LVMHグループ」

そして、今、最も話題を集めているのは、LVMHグループの時計だ。

 

世界最大のラグジュアリーコングロマリットの中では、時計・宝飾部門の規模は小さくて傘下の時計ブランドは4つしかない。

 

しかし時計業界のカリスマ経営者であるジャン-クロード・ビバーが、2014年から時計・宝飾部門のトップになると、傘下のブランドを次々と改革。ブランドの哲学や遺産を変えることなく、ブランドのポテンシャルを高めるために挑戦を続けており、素材や機構、あるいはデザインで新しい時計を生み出している。

 

属しているのは歴史と格式がある「ゼニス」と「タグ・ホイヤー」、ローマ発祥のラグジュアリーメゾン「ブルガリ」、そして個性的なデザインや機構で人気を集める「ウブロ」だが、どのブランドも刺激的な時計を生み出し続けている。

 

つまり、自分の懐具合に合わせた時計を探したいなら、セグメントがかっちりと決まっているスウォッチグループ。リッチ&ラグジュアリーで伝統的な時計を求めているなら、名門が揃っているリシュモングループ。とにかく今っぽく華やかな時計を求めているなら、前例にないチャレンジをいとわないLVMHグループを狙えばいいということになる。

 

今や、時計のスタイルを決めるのは、グループごとのビジネスの方向性といっても過言ではないのである。

 

 

篠田 哲生

時計ジャーナリスト、嗜好品ライター

 

時計ジャーナリスト、嗜好品ライター

1975年生まれ。講談社「ホットドッグ プレス」編集部を経て独立。時計専門誌、ファッション誌、ビジネス誌、新聞、ウェブなど、幅広い媒体で硬軟織り交ぜた時計記事を執筆している。

また仕事の傍ら、時計学校「専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」のウォッチコース(キャリアスクールウォッチメーカーコース)に通い、時計の理論や構造、分解組み立ての技術なども学んでいる。スイスのジュネーブやバーゼルで開催される新作時計イベントの取材を、15年近く行っており、時計工房などの取材経験も豊富。

著書に『成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。』(幻冬舎)がある。

著者紹介

連載ビジネスパーソン必見!教養としての腕時計選び

教養としての腕時計選び

教養としての腕時計選び

篠田 哲生

光文社

そこかしこで時刻を確認することができる時代、人は何のために腕時計を身につけるのか? 今や時計はアートや音楽と同じように「教養」となった。 腕時計を成熟したビジネスパーソンの身だしなみ、あるいは「教養」として…

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