65歳以上の高齢者の主な死因として、「悪性新生物(がん)」、「心疾患」、「老衰」に続く第4位にあげられるのが「脳血管疾患」です。生活習慣が原因の発症が多く、初期症状に気づくことができれば重症化を防ぐことができます。今回は医師である梶川博氏・森惟明氏が、脳血管疾患の検査で用いられることの多い「CTとMRI」の違いについて解説していきます。

 「単純CT」における脳梗塞早期所見とは?

脳梗塞の発病から数時間から24時間以内は頭部単純CTでは異常所見が現れにくく、あっても分かりにくいものです。

 

ラクナ梗塞のような小さな梗塞巣は視認できません。数時間経過するとある程度の範囲の脳梗塞の領域は低吸収域として認められるようになります。

 

CTにおける早期虚血性変化(early ischemic change)として、 レンズ核の不明瞭化、島皮質の不明瞭化、皮髄境界の不明瞭化、 脳溝の消失、閉塞動脈(例:中大脳動脈)の高吸収像などが見られます。

発症数分で症状を捉えられる「MRI拡散強調画像」

次の画像は組織水分子の動きを示すもので、CT像では異常所見を呈さない時期に、MRI拡散画像では脳梗塞発症後、数分以内に起きる細胞内浮腫を捉えることが可能です。

 

[図表3]脳梗塞超急性期のCT画像(異常所見を認めない)

 

[図表4]図表3と同時期の拡散強調MRI画像(異常所見を認める)

 

1.脳梗塞急性期には、細胞内浮腫が血管原性浮腫よりも優位なため、細胞内構築の改変や細胞内粘稠度の上昇が起こり、その結果、細胞内水分子の拡散低下を来し、病変が高信号となります。

 

2.脳梗塞慢性期には、細胞膜の破壊から血管透過性が亢進し、血管原性浮腫が優位となり、細胞内水分子の拡散亢進を来し、病変が等信号あるいは低信号となります。要するに、こうした画像特性を活かして、多発性脳梗塞で、新しい梗塞巣(高信号:白色)と陳旧性の梗塞巣(低信号:黒色)を鑑別することが可能となります。

 

左図:拡散強調画像、右図:ASL灌流画像(Arterial Spin Labeling;T1-1800msec) (MRI で造影剤を使用せず脳血流灌流状態を観察する撮像法)
[図表5]急性期脳梗塞のMRI 画像 左図:拡散強調画像、右図:ASL灌流画像(Arterial Spin Labeling;T1-1800msec)
(MRI で造影剤を使用せず脳血流灌流状態を観察する撮像法)

 

脳血管撮影(脳血管の造影検査)

脳血管撮影とは脳血管の状態を血管内に造影剤を入れて調べるレントゲン検査のことです。

 

頭蓋骨を消去して血管のみを際立たせる方法をDSA(Digital Subtraction Angiography:ディ-エスエイ)といいます。この検査の目的、対象疾患、方法、危険率や重篤な合併症を重点的に説明いたします。

 

本検査は、患者さんの疾患の診療上、必要性が高く、特に脳血管疾患の診断、治療においてとても重要な検査ですが、検査の有益性が危険率を上まわると判断した場合のみ検査をすることになります。

 

担当医からよく説明を聞き、ご本人やご家族の皆さまで十分に話し合って検査をするかどうかを決定してください。なお、脳血管撮影検査の方法は、検査として用いられる他に、脳動脈瘤、脳血栓・脳塞栓、脳腫瘍、脳動静脈奇形などに対する血管内治療法(血管内手術)としても用いられます。

 

【目的、対象疾患】

1.脳梗塞に関連することとして、頸部や脳の血管が細くなったり、詰まっている箇所がないかを調べる。

2.クモ膜下出血や脳内出血に関連することとして、血管に瘤(こぶ)(動脈瘤)や血管のかたまりなどの奇形がないかを調べる。

3.脳腫瘍に関連することとして、腫瘍を養っている栄養血管がどのように入っているかを調べる。

4.必要があれば、その他の開頭手術や穿頭術に先だって血管の状態を調べる。

 

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脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

梶川 博 森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢になるにつれて発症のリスクが高まる脳梗塞。 国民病ともされる脳梗塞の種類や予防法、治療法を知ることで、ならない工夫、なってからの対応を身に付けましょう。 「三大疾患に負けないシリーズ」第1弾!

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