後妻と初対面…キレイな身なりに沸々と怒りが
Aさんは葬儀が落ち着いた頃を見計らって、B子さんに電話をします。相談があるから週末に自宅へ伺いたいと話せば、戸惑いつつも承諾してくれたそうです。
はじめて足を踏み入れる“父の家”には不思議なほど現実感がなかったといいます。
Aさん「初めまして。この度はご愁傷さまでした。一応葬儀にも行ったんですが、ご挨拶もなく失礼しました」
B子さん「そんな……あ、お茶出しますね」
Aさん「いえ、お構いなく。相続のお話をしたらすぐ帰りますから」
軽く見ただけでも、B子さんが余裕のある暮らしをしていることは見て取れました。亡くなった母とは違う、張りのある肌や、手入れされた爪。調度品はどれも高級そうで、自分たちの生活との落差に愕然としたといいます。あくまで冷静に話し合いを進めようとしていたAさんでしたが、自然と語気が強くなっていきました。
Aさん「父とは会った記憶もありませんが、僕には血の繋がりがあるので……父の遺産を相続する権利があります。そうですよね?」
B子さん「はい、相続人は私とAさんの2人です。夫名義の貯金が3,000万円ありますから、その半分は……」
Aさん「……この家は?」
B子さん「え?」
Aさん「この家は、誰の名義ですか?」
B子さん「私と夫の共同名義です」
Aさん「それでは、この家の父の権利分についても、僕は半分相続する権利があるということですよね?」
Aさんの突然の発言に、B子さんは顔を真っ赤にしていいました。
B子さん「それはそうですが、ちょっと待ってください! そうしたら、この家を売らないといけません。私はどこに住めばいいんですか!?」
Aさん「年金と相続分で十分暮らしていけますよね? 衣食住に不自由することはないと思いますが」
Aさんがつとめて淡々と言葉を続けると、B子さんは思わずといった様子で声を荒げました。
B子さん「貯金はすべてあなたに譲りますから、この家だけは、私に相続させてください!」
Aさん「この家にこだわる必要がありますか? むしろ、バリアフリーのマンションなどに入居した方が使い勝手もいいのでは。ここは段差も多くて、高齢者の一人暮らしには不便だと思いますよ」
B子さん「こ、この家は、夫との想い出がつまった大切な……」
そこまでB子さんが話すと、Aさんの表情が一気に険しくなります。堪忍袋の緒が切れたといった風に音を立てて机に手をつきました。
Aさん「父と不倫して俺ら家族をめちゃくちゃにしたのに、よく想い出だなんて言えますね! 自分で図々しいとは思わないんですか!」
このように言うと、B子さんはうなだれたまま話さなくなったといいます。Aさんも「言いたいことは言えてすっきりしました」と晴れ晴れとした様子。その後の遺産分割は、貯金の1/2だけを分割し終えたといいます。
「これで十分。面倒くさいことも嫌ですしね」