前回は、納税に必要な税金の基礎知識、消費税の基本的な仕組みについて説明しました。今回は、消費税の納税義務が免除される特例と、新規開業時にあえて「課税事業者」を選択する理由について見ていきます。

納税義務の有無は基準期間における課税売上高で判断

消費税は、その課税期間の基準期間における課税売上高が1000万円以下の事業者については、納税義務を免除されます(注)。したがって、新規開業した個人事業者または新設法人については基準期間が存在しないため、設立1期目および2期目は原則として免税事業者となります。なお、基準期間とは、課税事業者か免税事業者かを判定する期間のことをいい、個人事業者の場合は前々年、法人の場合には前々事業年度をいいます。

 

しかし、その事業年度の基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額、または出資の金額が1000万円以上である法人については、その基準期間がない事業年度について納税義務を免除しないこととする特例が設けられています。なお、この特例の適用を受ける法人であっても、設立3期目以後の課税期間における納税義務の有無の判定については、原則通り、基準期間における課税売上高で行うこととなります。

 

この特例の適用を受ける法人は、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を、速やかにその納税地を所轄する税務署長に提出することとされていますが、消費税の新設法人に該当する旨の記載をした「法人設立届出書」の提出ですませることが認められています。

多額の消費税還付金を受け取れる可能性

このように、新規開業もしくは法人を新規設立した動物病院は、2年間は消費税を支払わなくてもよいことになるわけですが、ここであえて課税事業者を選択することを考えてみましょう。

 

新規開業時には、医療機器や設備の購入などに伴い多額の消費税を支払うことになるので、免税事業者の要件を満たしている場合であっても、消費税の課税事業者になることを選択することにより、多額の還付金を受け取れる可能性があります。

 

たとえば、医療機器を購入して支払った消費税が200万円、診療の際に受け取った消費税が50万円だった場合には、消費税の還付金額は150万円となります。

 

新規開業した事業者などは、その開業した課税期間の末日までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば、開業した日の属する課税期間から課税事業者を選択することができます。ただし、一度これを選択すると2年間は必ず課税事業者になりますから2年目(2期目)は納税が発生します。したがってその選択は慎重に行う必要があります。

 

(注)平成25年1月1日以後に開始する年または事業年度については、その課税期間の基準期間における課税売上高が1000万円以下であっても特定期間(※)における課税売上高が1000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となります。なお、特定期間における1000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

 

※特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月の期間をいいます。

本連載は、2014年8月27日刊行の書籍『どうぶつ病院を繁盛させる50の方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

どうぶつ病院を繁盛させる50の方法

どうぶつ病院を繁盛させる50の方法

百瀬 弘之

幻冬舎メディアコンサルティング

勤務医の時代はたとえ給料は安くても、独立して動物病院を開業すれば十中八九成功が約束されていた獣医師。 ペットブームの恩恵を受けて市場を拡大し続けてきた獣医師業界ですが、近年の動物病院の増加により飽和状態に。さら…

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