日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「高血圧」。生活習慣病や直接的な死因となる脳血管疾患となる高血圧患者の分布には、どのような傾向があるのでしょうか。

高血圧患者の多い地域と、食塩摂取量との関係は?

生活に関連する疾病は、地域差が生じます。では高血圧に関しては、どのような分布をしているのか見ていきましょう。

 

厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」によると、「高血圧症」で通院する人の割合は、人口10万人当たり全国平均6.08人。そのようななか、最も多いのが「青森県」で9.07人。全国平均の1.5倍です。以下「岩手県」8.64人、「秋田県」8.49人、「山形県」8.26人、「宮崎県」8.01人と続きます(図表2)

 

出所:厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」より作成
[図表2]都道府県別「高血圧患者率」上位10 出所:厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」より作成

 

一方で「高血圧症」で通院する人が最も少ないのが「愛知県」で5.07人。「広島県」5.14人、「東京都」5.15人、「滋賀県」5.30人、「神奈川県」5.32人と続きます。

 

上位を見ていくと、東北地方のなかでも北部の4県が上位を独占しているのが特徴的です。

 

前述のとおり、高血圧は食生活に左右されますので、総務省「家計調査」でその傾向を見ていきます。2017年~2019年平均の品目別都道府県庁所在市、および政令指定都市の「食塩の購入量」は、平均1685g。そんななか、最も食塩購入量が多いのが「長野市」で2961gで、全国平均の1.75倍ほど。ちなみに「高血圧症患者」では、「長野県」は35位と下位グループです。続くのが「青森市」「山形市」「秋田市」「新潟市」と、東北3県が入っています(図表3)

 

出所:総務省「家計調査」2017年~2019年平均の品目別都道府県庁所在市、および政令指定都市より作成
[図表3]地域別「食塩購入量」上位10 出所:総務省「家計調査」2017年~2019年平均の品目別都道府県庁所在市、および政令指定都市より作成

 

続いて「醤油の購入量」。全国平均は4979mlに対して、最も多いのが「山形市」で7847ml。全国平均の1.6倍ほどです。「青森市」は3位、「秋田市」は6位、「盛岡市」は19位です(図表4)

 

出所:総務省「家計調査」2017年~2019年平均の品目別都道府県庁所在市、および政令指定都市より作成
[図表4]地域別「醤油購入量」上位10 出所:総務省「家計調査」2017年~2019年平均の品目別都道府県庁所在市、および政令指定都市より作成

 

さらに「味噌の購入量」。全国平均は5146gに対して、最も多いのが「長野市」で8038g。全国平均の約1.5倍です。「秋田市」は3位、「盛岡市」は5位、「山形市」は6位、「青森市」は8位でした(図表5)

 

出所:総務省「家計調査」2017年~2019年平均の品目別都道府県庁所在市、および政令指定都市より作成
[図表5]地域別「味噌購入量」上位10 出所:総務省「家計調査」2017年~2019年平均の品目別都道府県庁所在市、および政令指定都市より作成

 

「高血圧症患者」と「塩、醤油、味噌の購入量」には正の相関関係があり、密接な関係があるのは明らか。また「高血圧症患者」の上位の東北4件は、塩分量の多い調味料の購入量でも上位に来ていることから、地域の食文化によるところが大きいと考えられます。

 

高血圧が続くと動脈硬化を進行させ、心疾患や脳血管疾患のリスクを高めます。健康を保つためにも、日々、血圧には気を付けていきたいところです。

*1 1Ikeda N, Saito E, Kondo N, Inoue M, Ikeda S, Satoh T, Wada K, Stickley A, Katanoda K, Mizoue T, Noda M, Iso H, Fujino Y, Sobue T, Tsugane S, Naghavi M, Ezzati M, Shibuya K. What has made the population of Japan healthy? Lancet 2011; 378:1094-1105.

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