B子さん「そうだ、A知ってる? D子さん、マンション売るんだって」
Aさん「え? あの9,000万円の高級タワーマンション?」
B子さん「そう。なにか事情でもあるのかしらね」
Aさん「……なにかおかしくないか?」
Aさんが違和感を覚えて調べてみると、D子さんに散財癖があることが発覚。ブランドもののバッグや洋服を買いあさったりと、昔からCの財産を浪費していたことが分かったのです。
更には、AさんとB子さんはキャッシュでマンションを購入したと聞いていましたが、それも嘘でした。実は高額のローン(5000万円)があると判明したのです。
Aさん・B子さん「ちょっとD子さん、これはどういうこと? これじゃCがあんまりに浮かばれないじゃない!」
AさんとB子さんが問い詰めても、D子さんはどこ吹く風といった様子でそっぽを向いてしまいます。
D子さん「でも、義兄さんも義姉さんも、遺産はいらないと言ったじゃないですか。今更いわれたって知りませんよ」
Aさん「だが、俺たちはCの大学進学のために、昔から色々やってきたんだ。ローンの支払いで残った分はせめて、きちんと遺産分割をするべきなんじゃないのか?」
B子さん「そうよ、Cのお金を食いつぶすだけ食いつぶして! あんまりにCが不憫だわ!」
過去Cに資金援助をした事実を引き合いに出すと、D子さんは耐えかねたように声を荒げます。
D子さん「あなた方は遺産はいらないってハッキリ言いましたよね? それを蒸し返されたって知りませんよ!!」
Aさん・B子さん「書面にはしていない! 遺産分割は口約束の状態なんだから、あんなのは無効だ!」
三人の激論は何時間も続き、夜になっても決着はつかなかったといいます。
解説:口頭による遺産分割協議は有効か?
口約束による遺産分割協議が論点ですね。遺産分割協議は様式を問わないので、口頭による遺産分割協議も成立します。
しかし、書面に残していない場合には、その有効性を証明することができません。Dさんが、いくら「口頭で決めたじゃない!」と主張しても残念ながら証明する術がないのです。
そのため、訴訟を起こしても、調停に持ち込んでも、認められる可能性は限りなく低い状況かと思います。
このようなトラブルを防ぐためにも、遺産の分け方を決める際には、プラスの財産とマイナスの債務の両方を相続人全員で必ず確認し、分け方を決めたら、遺産分割協議書という書面に残しておくことをおすすめします。遺産分割協議書には署名と実印での押印を行い、印鑑証明書も一緒に保管しましょう。