そもそも「ものが見えるしくみ」とは?
それでは白内障は、どのように起こるのでしょうか。それを詳しく説明する前に、私たちが普段どうやってものを見ているのか、人間の目の構造やものが見えるしくみについて知っておく必要があります。
人間の眼球は、図表1のような構造をしています。
多くの人の眼球は、直径2.3~2.4cmの球体で、ピンポン玉より少し小さいくらいのサイズです。目が大きく見える人でも小さく見える人でも、この眼球のサイズはあまり変わりません。
黒目の表面を覆っているのが、厚さ0.5mmほどの半球状の膜「角膜(かくまく)」です。この下には瞳の茶色い部分「虹彩(こうさい)」があり、目に入る光の量を調節しています。その奥にあるのが、断面がラグビーボールのような形をした「水晶体」です。
水晶体を支えるのが「毛様体(もうようたい)」という筋肉と、その間をつなぐ「チン氏帯」と呼ばれる糸状の組織です。この毛様体筋が縮んだりゆるんだりすることで水晶体は厚さを調節しています。
水晶体の後ろの空間は、透明なゼリー状の物質「硝子体(しょうしたい)」で満たされており、眼球の内側の壁が「網膜(もうまく)」と呼ばれる部分で、視神経とつながっています。
一般に、人の目はカメラにたとえられます(図表2)。カメラのレンズ(角膜と水晶体)を通して、入ってきた光がフィルム(網膜)に映し出され、網膜上にひとつの点として映ったとき、私たちは「ものがはっきり見える」と認識することができます。これが、ピントがあっているという状態です(図表3)。
ピント調節が弱くなり、色も変わる…水晶体の老化
若いときは、多くの人はどこを見ても「ものがはっきり見える」状態にあります。これは、どこでも見たいところに自在にピントがあうということですが、このとき重要な働きをしているのが、カメラのレンズにあたる水晶体です。
近くを見るときは、水晶体は厚くなって屈折を大きくして、近くのものにピントをあわせます。反対に遠くを見るときには、水晶体を薄くして屈折を変え、遠くにピントをあわせています。この水晶体のピント調節力があるからこそ、若いときには遠くの看板も手元の本の文字も、すべてクリアに見ることができるのです(図表4)。
生まれたての子どもの水晶体は、ごく薄い黄色でみずみずしく、ゴムのような弾力があります。しかし年齢を重ねるにつれて水分が失われ、弾力を失って硬くなり、徐々に厚さを調節する機能が低下してきます。
そうすると、近くを見たいときにも水晶体が十分な厚さにならず、ピントがぼやけるようになります。これが、老眼が起こるしくみです。
さらに年齢を重ねると、水晶体を構成するタンパク質の変性が進み、水晶体が硬くなるとともに濁った状態になります。こうして起こるのが白内障です。
一度変性がはじまったタンパク質はもとに戻ることはなく、徐々に濁りが進行し、水晶体自体の色も薄い黄色から濃い黄色、褐色へと変わっていきます(図表5)。水晶体が着色してくると色の見え方も変わり、特に青色系が見えづらくなります。
市川 一夫
日本眼科学会認定専門医・認定指導医、医学博士
市川 慶
総合青山病院 眼科部長
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