英国ロンドンに本拠を置き、グローバルな債券投資に特化したファンドマネジメント、アドバイザリー会社であるStratton Street Capital。独自の債券投資モデルで高い運用パフォーマンスを誇る。同社のCIOで債券運用戦略の最高責任者を務めるアンディ・シーマン氏、セールス&ビジネスデベロップメントヘッドを務めるベンジャミン・デイ・カイア氏にインタビューを行った。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウエルス・リミテッド(NWB/日本ウエルス)のシニア・マネージャー幾田朋彦氏である。
「独自の運用プロセス」と「哲学」で他社を上回る成果
幾田 まず最初に御社についてご紹介いただけますか?
ベン 私たちStratton Street Capitalは、2000年に運用を始めたファンドで、債券におけるスペシャリストです。2007年に業界で初めて中国元のオフショアファンドの運用を始めたことから、比較的アジアでもよく知られています。
私たちのファンドの運用成績は、他社比でも非常に良く、多くの運用会社が苦戦した2008年でさえ、プラスのリターンを得ることができました。私たちはユニークな運用プロセスと哲学で、他社を上回る成果をあげています。代表的なファンドである「New Capital Wealthy Nations Bond Fund」はクレジット分析をもとにグローバル債券に投資するファンドです。
ファンドは投資適格債券のみを投資対象とし、その中で比較的利回りの高い債券に投資します。現状の直接利回りは4.5%程度です。しかし、目標とするのは高い利回りではなく、より魅力的なトータルリターンの獲得を目指しています。ですから、保有債券の信用度は常にチェックしています。
「New Capital Wealthy Nations Bond Fund」は、2009年に運用を開始し、資産残高は約9億米ドルに達しています。運用成績は好調で、年初来でみても約6%上昇しています(手数料控除後、2016年4月末現在)。モーニングスターでは同じカテゴリーに分類されるファンドが350近くありますが、3年、5年といった長期で見ても常に上位のパフォーマンスを達成しています。
組入れ債券の大きな指標となる「対外純資産残高」
幾田 御社の投資哲学についてもお聞かせください。
ベン 私たちの独自性のある運用哲学について、重要な点をいくつかお話します。まず、国別に分析する際、先進国と新興国という見方はしません。対外純資産残高を指標として、債権国と債務国に分類をします。
次に、債券のマネージャーが使うことの多い伝統的な指数を参照しません。国や企業が起債し、債務額が増加すると、必然的にその国や企業の発行する有価証券が指数に占めるウェイトが高くなります。ですから、指数に連動もしくは指数を上回る運用を目指すと、債務の多い国や企業の組入れ率が高くなるのです。
そして、私たちは債券の信用度調査において、バリューアプローチをとっています。これは、債券の実勢市場価格が私達の独自に算出する公正価格より割安なものを選んで投資をする手法です。
最後に、マクロ分析において豊富な経験を持つシニア・ファンド・マネージャーの存在と、独自に開発したマクロ分析モデルが、ファンドの運用に非常に大きな役割を占めています。
このような運用哲学に基づき、格付けやデュレーション戦略において、ポートフォリオをダイナミックに変更しています。例えば、2008年のような金融危機に直面すると、いち早くディフェンシブなポートフォリオに変更し、回復時を早期に見極めスプレッド拡大の好機を狙います。実際に、他の運用会社が苦戦した1998年や2008年も、私たちのファンドはプラスのリターンを得て、このような運用手法が効果的であることが実証できました。
幾田 確固たる運用哲学をお持ちというわけですね。
Stratton Street Capital
チーフインベストメントオフィサー、パートナー
2001年にStratton Street Capital に入社し、現在、CIOとしてRMB債券ファンドなど債券の運用戦略における最高責任者を務める。同社のマーク・ジョーンズとともに、“New Capital Wealthy Nations Bond Fund”の運用アドバイザーをファンド設定来担当している。 Stratton Street Capital入社前には、インベステックにて債券運用に従事。後に、ハイインカムファンドの運用責任者となり、担当したファンドは好成績を収める。1993年には、運用するファンドの成績が1位になるとともに、 Wall Street Journalから優秀運用者に与えられる賞を欧州債券部門で受賞。 1990年にファンドの運用を始め、運用業界にて25年超の実績を持つ。 金融経済学の学士号を保有。
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連載債券投資に特化した英系運用会社の幹部に聞く「グローバル債券の運用戦略」
Stratton Street Capital
セールス&ビジネスデベロップメントヘッド
2014年1月にセールス&ビジネスデベロップメントヘッドとしてStratton Street Capitalに入社。伝統的資産の運用ならびにオルタナティブ運用を含め資産運用業界で12年以上の経験を持つ。Stratton Street Capital入社前は、レッグメイソン傘下のEsemplia Emerging Marketsにてセールス&マーケティングヘッド、それ以前は、シティグループのアセットマネジメントで、EMEAクライアントチームに所属。 チャータード・オルタナティブ・インベストメント・アソシエーション(CAIA)会員、経済学の学士号ならびにInvestment Management Certificate (IMC)を保有。
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Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス)
ダイレクター
2006年より三菱UFJモルガン・スタンレー証券(入社当時は三菱UFJ証券)にてリテール営業、株式、仕組債、商品戦略等の幅広い業務に従事。2011年から2012年にはニューヨークのモルガン・スタンレー・ウェルスマネジメント(当時はモルガン・スタンレー・スミス・バーニー)でマネージド・アカウントをはじめとする米国の富裕層ビジネスの現場で経験を積む。2014年、現職であるNippon Wealth Limitedの商品およびビジネスデベロップメントの責任者として就任。国際基督教大学卒。
WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/
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