「人生100年時代」といわれています。22歳から65歳まで現役で働いていた時間よりも、定年後の時間のほうが長いのです。定年後の避けては通れない課題は「お金」「健康」「生きがい」。これが定年後の3大リスクです。この「3大リスク」をうまくクリアできれば、第二の人生をバラ色にすることがきます。本連載は長尾義弘・福岡武彦著『定年の教科書 お金 健康 生きがい』(河出書房新社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

75歳まで繰下げると、最大84%の増額になる

「繰下げ受給」は長寿時代にあった方式

 

これに対して、繰下げ受給は年8.4%の増額になります。70歳まで繰下げると42%の増額になり、増額された年金を一生涯受け取ることができます。

 

おわかりですね。受給開始を早めれば年金が減らされ、遅らせれば増えるわけです。

 

たとえば、65歳の受取額が月額20万円(年額240万円)の人が、70歳まで繰下げ受給をすると、月額28.4万円(年額340.8万円)になります。

 

老後生活の支出が25万円だったとすると毎月5万円の赤字になりますが、繰上げ受給をすると赤字がなくなり、さらに3.4万円の黒字に変わります。これで老後生活は安定することになります。

 

定期預金の利率が0.002%の時代ですから、公的年金の年8.4%の増額は、ひじょうに高利回りです。投資信託などで運用しようとしても、これだけの利回りは難しいでしょう。公的年金は金融商品ではありませんが、投資信託や株式などで資産運用するより、ずっと安全で高利回りな商品といえるのです。

 

さらに2020年に年金改革法が成立し、2022年4月から75歳まで繰下げが可能になります。75歳まで繰下げると、最大84%の増額です。年金が倍近くになる計算です。

 

もっとも、長生きしてこそ繰下げ受給の恩恵を受けることができます。その損益分岐点は11年11か月です。68歳から受け取れば80歳以降、70歳からなら82歳以降が得になります。75歳まで繰下げたとしたら、87歳が損益分岐点になります。

 

75歳まで繰下げで得するかどうかは、女性のほうが長生きなので有利なのですが、男性は平均寿命を超えているため、微妙ともいえます。繰下げ受給は、いつ受給を開始してもいいという、とても柔軟な制度です。何歳まで繰下げるかは、自分の老後資金と健康状態を見ながら決めればいいと思います。

 

つぎに、繰下げ受給の柔軟な制度について、もう少し詳しく説明します。

 

 

 

繰下げ受給の制度をうまく使いこなす知恵

 

繰下げ受給の手続きは、65歳以降に「老齢基礎年金・老齢厚生年金 支給繰下げ申出書」を提出します。公的年金の請求書を提出しなければ、自動的に繰下げ受給になるのですが、受給資格の時効の関係もあるので提出をしておきましょう。

 

この申請書に、「いつから年金を受け取るか」を記入する欄はありません。期間内であれば、いつ支給を開始するのも自由です。

 

たとえば、70歳まで繰下げ受給をしようと思っていても、途中で年金を受け取ることができます。繰下げ受給をやめる場合には、2つの方法があります。具体例をつかって説明をしましょう。

 

たとえば、70歳まで繰下げ受給をしようと考えていたとします。しかし、68歳の時点で老後資金が少なくなってきました。このままでは不安になってきたので、やはり年金を受け取りたい……といった展開もあると思います。この場合は、68歳からの受け取りになりますから、増額された年金額を一生涯受け取ることができます。

 

また、68歳のときに要介護になってしまい、まとまったお金が必要になった場合は、それまでの年金未支給分を一括で受け取ることもできます。ただし65歳の時点での年金額で計算されます。そして、それ以降も65歳での年金額を一生涯受け取ることになりきます。このように融通のきく制度なのです。

 

また、公的年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金の二つがありますが、両方を繰下げることも、どちらか一方を繰下げることもできます。

 

 

 

長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員

 

福岡 武彦
1株式会社ライフエレメンツ代表取締役
税理士

 

 

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