必要な人だけに情報が提供できる手段はあるか
このように、多くの技術が進化し、さまざまなことが分かるようにはなったものの、このデジマの世界では「やや」というか「結構」、企業よりの論理で進化してきました。もちろんCVというのは、商品の購入であったり、サービスの問い合わせであったり企業の売上を大きく動かす指標にもなることから、やや乱暴な進化をしてきたことも、否めません。
今は少なくなりましたが、Webサイトへの訪問者が男だから、カミソリ、女だから、口紅をだすというような、訪問者のことを本当に考えていない広告やWebサイトも存在します。リタゲーティング広告という仕組みは、一度クリックすると、CVの有無に関わらず暫くの間表示されてしまうという厄介なもので、スパムといわれても仕方のないような仕組みになっています。
経産省の定義を引用すると、DXとは「顧客や社会のニーズを基に」とあり、性別によりカミソリや口紅の広告を一方的に出すのは、顧客のニーズを基にしているとは言い難い。実際に、Webサイトではなくリアルの世界では、百貨店に性別だけで商品を押し売りしている店員さんはいないのですから。
そもそも広告とは、きちんと顧客を理解して、顧客のニーズのある広告を提供すれば、それは広告ではなく、情報として顧客から必要とされるものに変化します。
現在、個人情報などの観点から、EUや、アメリカの西海岸を中心にCookieと呼ばれるWebサイトの訪問者を一時的に特定する仕組みの改善や撤廃を業界で進めています。日本では、この法整備は時間が掛かるかもしれませんが、AppleやGoogleが整備を始めているので、法律に関係なく利用者は何らかの影響を受けるでしょう。また、それ以上に企業は新しい仕組みを考え、このデジマの設計を見直す必要がでてきたとも言えるでしょう。
一方、現在、Cookieを利用しない顧客とのコミュニケーション方法は多岐に渡り、コミュニューケーションボットやアンケート、懸賞、ゲームなど様々な方法で顧客のニーズを聞き出す技術も進化しており、顧客も自分に有益であれば喜んで情報を提供するようになっています。
顧客のニーズを理解するには、まずは顧客をしっかりと理解し、一方的な選択肢を与えないことが必要となってきます。広告収入やコンバージョンが企業を支えている収入源であることは理解していますが、このバランスを崩してしまっては、企業そのものの社会的価値が低下していきます。企業は、「どうやったら買ってくれるか」といった議論やクリエイティブ製作はほどほどにして、必要な人だけに情報が提供できるような施策を、積極的に展開していくべきです。
DXは、今まで人間や手作業でやっていたことが、ネットで完結したり自動化されたり、高速で処理されたりと便利になることは間違いありません。ただ、そこに、顧客のニーズや提供者側の「思いやり」「真心」のような要素は必ず必要になってきます。
ぜひ、企業や国のDX化の仕様書には、この要素を記載していただき、本当の意味で「顧客や社会のニーズを基」にしたDX化が促進されることを願うばかりです。
佐野 敏哉
株式会社Macbee Planet エヴァンジェリスト
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