日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「学習塾費用」。厳しい受験戦争を勝ち抜くためには絶対不可欠な存在。どれくらい費用をかけているものなのでしょうか。

子供一人あたりの「学習塾費用」は30万円超え

受験シーズン真っ只中。例年とは状況が異なり、特に受験生は混乱していることもあるでしょう。またすでに来年度の受験においても動き出している受験生も多いでしょうが、まだまだコロナ収束の見通しが立たないなか、果たしてどのようなシーズンを迎えることになるのか……不安でいっぱいなのではないでしょうか。

 

受験生本人はもちろんのこと、不安なのはその親も一緒。景気が下り坂のなか、給与が減少した人も多く、なかには職を失った人も。受験、そして進学には多額のお金が必要になりますから、親の心配は付きません。

 

たとえば大学への進学。文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」「私立大学等の平成29年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によると、大学の初年度納入金は、国立大学で81万7800円、私立大学文系で116万5300円、私立大学理系で154万900円、私立大学歯科で428万9200円、私立大学医系で504万3200円。 国立大学でいえば、初年度納入金のうち授業料は53万5800円ですから、これから数年、この程度の学費は最低限かかる計算になります。

 

進学に際し、心配すべきは学費だけではありません。いまや受験に学習塾への通学は欠かせませんから、受験生の親は合格を手にするまでの費用も加味しておかなければなりません。

 

経済産業省の「平成30年特定サービス産業実態調査」では、学習塾業者の年間売上と在籍者数を発表しています。学習塾の売上はほぼ在籍者からのものと考えると、売上を在籍者数で割ったものが、受講生一人当たりの金額とイコールと考えられるでしょう。

 

全国には4万6734ほどの学習塾があり、312万1984人の子供が在籍。一人当たり、1年にかかる塾費用は31万4991円。1ヵ月あたり、2万6000円ほどの支出をしている計算です。

 

都道府県別にみていくと、最も学習塾に多くお金をかけているのが「東京都」で、年間子供一人当たり48万2218円。1ヵ月あたり4万円超の計算です。第2位が「神奈川県」で42万1787円、第3位が「埼玉県」で38万6243円と続きます(図表1)

 

出所:経済産業省「平成30年特定サービス産業実態調査」より作成
[図表1]都道府県別「学習塾費用」上位10 出所:経済産業省「平成30年特定サービス産業実態調査」より作成

 

上位10を見ていくと、首都圏の一都三県と、関西圏の二府二県がランクイン。そこに福岡県を加えた9県が全国平均を上回っています。

 

一方で最も学習塾にお金をかけていないのが「岩手県」で17万1255円。1ヵ月あたり、1万5000円以下。トップの「東京都」の3分の1強です。「新潟県」が17万5228円、「秋田県」が18万8299円、「長野県」が19万592円、「鳥取県」が19万2218円と続きます。

 

大都市圏が上位(=学習塾にお金をかけている)を占めている傾向は、大学進学率のランキングにもみられます(関連記事:『都道府県「大学進学率」ランキング…2位は「東京」、1位は?』)。順位の変動はあるものの、学習塾費用の上位は大学進学率でも上位グループに、学習塾費用の下位は大学進学率での下位グループに。地域の実情もあるでしょうが、学習塾費用と進学率には、強い関係がありそうです。

 

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