医師が不動産運用を行うメリットを理解出来ていたとしても、資金を動かす際には精神的にも大きな決断が必要になります。その背景にある葛藤やそれぞれの医師としての立場、将来への不安にはどのようなものがあったのか。本連載では、不動産運用により資産を形成した成功事例、さらに一歩進めて、不動産を活用して得た資産による開業や新たな医療・福祉サービスなどの事例を紹介します。今回は不動産運用の具体的な収支計画と任意売却物件の仕組みについて見ていきます。

将来の不安も解消して不動産投資に積極的なA氏

 

 診療科 整形外科
 年齢 32歳
 家族構成 独身
 居住地 中部地方
 勤務医としての年収 1,400万円

 

〈前回までのあらすじ〉

昼夜を問わず働きづめである勤務医のA氏は、先輩のアドバイスもあり節税目的で不動産投資を始めることに。しかし、管理委託契約を結んでいた不動産会社の不親切な対応もあり、一度は不動産投資に対してネガティブになる。しかし、将来のライフプランとタックスメリット考慮し、現保有の2戸を維持したまま、新たに都内の3戸を購入。5戸すべてを弊社の管理とし、一括借り上げをすることとなった。


このような経緯があって、私は、A氏に都内の新築マンションを勧め、A氏はそれを購入しました。そのうち1戸の収支計画が下図表のようになります。

 

物件価格は2,510万円。頭金は1,000万円あるということだったので、1戸当たり約300万円。融資金額は約2,210万円でした。一括借り上げによる家賃収入は月々9万2500円ありますが、ローンの返済などで収支は毎月マイナス1万1775円になります。しかし、初年度の節税効果は所得税と住民税合わせて約120万円ありました。つまりトータルでは年間約106万円のプラスです。


「今までとは桁違いにお金を貯められそう。将来に対する不安も消えた」と、A氏は会うたびに笑顔を見せてくれます。

 

不動産ポータルサイトには出てこない「任意売却物件」

実はこの話には続きがあります。A氏とはその後もマメに連絡を取り、生命保険や節税の話をしていました。ある日、アポイントを取って病院に会いに行くと、なぜか浮かない表情です。理由をたずねると「去年はしっかり節税できて本当によかった。でも最近通帳を見ると、毎月残高が減っていく。生活費も切り詰めなければならない気がしてきた」と言います。

 

A氏の不動産運用は、間違いなく成功しています。しかし、それは節税効果があってこそ。毎月の収支は5戸分で5万円程度マイナスなのです。長期的な視点で考えれば、運用実績は確実にプラスとなりますし、本書ですでに説明した通り、毎月の諸経費は資産形成のための必要経費です。


とはいえ、A氏が心配だと言うのならば、答えは簡単です。毎月の収支がプラスになる物件を購入すればいいのです。この提案をすると、A氏はすぐに乗り気になってくれました。頭金は3,000万円用意できるというのです。


昨年800万円のBMWを買い、さらに物件の購入で900万円の頭金を支払ったのに……。私はあらためてA氏の底力に驚きました。


さっそくお勧めできる物件を探すと、めったに出ない掘り出し物を見つけることができました。なぜ掘り出し物かというと任意売却物件だったのです。任意売却とは、ローンが支払えなくなった物件に対してオーナーが融資を行った金融機関と話し合い、競売手続に入る前に売却することです。

 

ローンが支払えなくなったと聞くと、何かいわく付きのように感じるかもしれませんが、実はリーマンショック後あたりからかなり増えています。原因として不景気の昨今では法人オーナーの倒産が考えられますし、個人オーナーではリストラやボーナスカットで支払いができない、固定資産税が払えない、また夫婦で共同購入したが離婚したので払えない、といったケースもあります。けっして後ろめたい物件ではなく、むしろ売り急いでいるがゆえに相場よりも安く購入できることもある、お宝物件と言えるでしょう。


「不動産に掘り出し物はない」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、それは一般の人に限ったことです。一部のプロの間では、掘り出し物の情報が行き来し、そのネットワーク内だけで売買が完結します。


その一部のプロになる条件は、即決するかどうかです。金融機関は物件を売り急いでいます。だから情報を流す先は、自社で買い取る、または優良な見込み客を多数持っている、いずれにしても即決する可能性がある業者だけです。


相場から3割引きの物件が、一般市場に出たら想像を絶する争奪戦になるはずです。しかし、任意売却の物件はそもそも金融機関が情報を流さないので、絶対に不動産ポータルサイトには出てきません。

 

このような物件の情報は、金融機関とコネクションのある不動産業者にしか流れてこないのです。

 

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