新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の再発令は、人々の暮らしに多大な影響を及ぼしています。今回は、世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が、コロナ禍の結婚式中止に関わる「キャンセル料」の支払い義務について解説します。

「結婚式場キャンセル」に関する相談が増加中

先日来、結婚式場キャンセルによるキャンセル料のご相談が急増しています。

 

結婚式などの開催による人の集まりは、緊急事態宣言下においても、完全に禁止とまではされず、結婚式での集まりでのクラスターの発生も繰り返し報道されていることから、参列者へ配慮して、実際に予定していた結婚式をキャンセルする方々が増えたことによるものと思われます。

 

一方で、結婚式場側の辛い事情もあるでしょう。今回、東京都では、飲食店には一日最大6万円の時短協力金が給付されることになりましたが、結婚式場などはその対象とはならず、今回の再度の感染拡大に大きな影響を受けています(関連記事:緊急事態宣言発令…「結婚式のキャンセル料」はどうなる?)。

天災は式場側からのキャンセル扱いに…新型コロナは?

火事や地震、津波で式場がなくなってしまった、という場合、つまり天災などの「不可抗力」により式の開催自体が「不可能」になってしまった場合であれば、客都合によるキャンセルではなく、式場側からのサービスの提供自体が不可能(=「履行不能」)ですから、客側も対価を支払う義務が消えてしまいます(民法536条1項、542条1項)。

 

では、新型コロナウイルスという感染症は、このような場合にあたるでしょうか。

 

「新型コロナ」は不可抗力の事態に該当する?(画像はイメージです/PIXTA)
「新型コロナ」は不可抗力の事態に該当する?(画像はイメージです/PIXTA)

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、昨年来に発生した事象ですので、明示的に取り扱った裁判例はまだ見当たりません。

 

社会通念上は、「参列者の健康に配慮するのは当然で開催が不可能」と考えられるように思われます。式場によっては、約款、契約内容にかかわわず、時勢に鑑み、請求なしということで落ち着けているところもあると聞きます。

 

一方、冒頭のような、天災によって会場が滅失してしまった!というような場合と比べると、同列とみるのは躊躇されます。実際に飲食なし、もしくはリモート併用で結婚式を開催されている方もいますので、絶対に不可抗力に分類される、とはいいがたいのが実情です。

 

そのために、キャンセル=客都合による解約 となり、式場側は、約款(契約)内容に従い、キャンセル料を請求している場合も多いようです。

 

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本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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