日本の相続財産は土地・家屋が4割近くを占めます。手元に豊富な資金があればよいのですが、相続したのが不動産のみで納税できない場合、どうしたらよいか。遺言書によって姉には実家、弟には現金を遺産配分したために揉めてしまった事例と、その解決方法を税理士の岡野雄志氏が紹介します。

家の相続で借金が増える?対処法は5つ

相続税が払えない場合の選択肢には、以下の5つがあります。

 

(1)延納

 

5年~20年の期間内に分割払いで納税する方法で、利子税の支払いを伴います。また、相続税課税額が10万円超であること」「現金納付が困難であること」「延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること(ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません)」「担保提供書類を添付・提出すること」などの要件があります。

 

(2)物納

 

延納しても金銭納付が不可能な場合に限り許可される、不動産や有価証券などをそのまま納付する方法。ただし、遺産分割が決定しておらず、権利帰属が明確化していない財産を物納することは不可能です。

 

(3)不動産を売却して現金化

 

期限内に売却できれば、現金で相続税を納付するという方法。ただし、Eさんの娘さんの場合、住み替え先も見つけなければいけません。

 

(4)財産放棄(遺産放棄)

 

遺産配分に対して「相続しない」と意思表示する方法。相続税は支払わなくて済みますが、Eさんの娘さんは住む場所も失うことになってしまいます。

 

(5)金融機関から借金

 

銀行などから融資を受けて、現金で納税する方法(担保の提供が必要)。Eさんの娘さんの場合、返済の目途が立てられないため、有効とはいえません。

 

娘さんは「(1)延納」を選択され、家庭裁判所の調停が成立したのち、結果的には「(3)不動産を売却して現金化」を選択されました。住み慣れた実家を手放すのは断腸の思いであったろうと想像しますが、無事、住み替え先も見つけられたようです。

 

また、当税理士事務所で相続不動産の評価額を見直し、相続税を1,000万円程減額することができました。無事、娘さんは納税も行うことができ、税理士としても安堵しています。あとは、こじれてしまった弟さんとの関係が元通りになることを願うばかりです。

 

 

岡野 雄志

岡野雄志税理士事務所 所長 税理士

 

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