よく聞かれるはずなのに、自身の体重を即答できない患者は少なくありません。増減に関わらず、体重の変化は身体に何らかの異常が生じていることを意味するため、しっかり把握しておくことが重要なのです。本記事では、国民健康保険坂下病院名誉院長の髙山哲夫氏の著書『新・健康夜咄』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「現役医師」の声をお届けします。

 

「急激な体重減少、急激な糖尿病の悪化、出現の時は膵がんを疑え」

 

そんな言葉が頭を過ります。そのつもりで診察を進めますと左腰を叩くと痛みがあります。また丹念に探ると上腹部にしこりが触れるようです。その日のうちに結果は判明しました。Mさんはやはり膵がんでした。がんのため胆汁の流れる胆管と膵液の流れる膵管が狭窄され、もうしばらくすれば誰でもが異常と気づく黄疸が出現するところでした。

 

同じように膵がんだった62歳のOさんも症状はただ一つ急激な体重減少でした。体重減少を何度も担当医師に訴えたにも拘わらず対応して貰えず、受診された時は既に末期の状態でした。この2人の場合は患者さん自身が体重の異常減少に気づいています。

 

療養病棟に入院されていた82歳のKさんは糖尿病があります。脳梗塞を繰り返しておりあまり言葉も出ません。回診していてKさんは以前に比べ痩せたように思いました。気になって検査した結果やはり肝臓に腫瘍が認められました。

 

体重測定は誰でもが手軽に行うことができます。体重増加に対する心痛が生じる以外測定に伴う苦痛はありません。何よりも一度体重計を購入すれば測定による費用はかかりません。でも体重の変動は健康度の指標となります。

 

 

※本記事は連載『新・健康夜咄』を再構成したものです。

 

 

 

髙山 哲夫

国民健康保険坂下病院名誉院長

 

 

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新・健康夜咄

新・健康夜咄

髙山 哲夫

幻冬舎メディアコンサルティング

最新医療機器より大切なものは、患者さんを想う心――。著者のところには、がん、糖尿病、嚥下困難、胃ろう、認知症、独居うつ、褥瘡など、様々な病気をもつ高齢の患者さんがやってくる。地域の高齢な患者さんの声に真摯に耳を…

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