生活の足がない…車の運転を続ける「地方の独居老人」の悲痛

国の施策方向は病院医療から在宅医療へと変わりつつあります。住み慣れた家で過ごし人生の終焉を迎えることは、誰もが望むことでしょう。しかし、核家族化が進行した地域では、本人や家族が在宅死を望んでも、なかなか叶えられないのです。今回は、地方の在宅看護の現状について見ていきましょう。

生活の足がない…車を運転し続ける高齢者の悲痛

近年ご高齢の方の車の運転が問題になっています。実際に認知症のある方や難聴のある方、手足の運動障害がある方が運転されているケースも少なくありません。そのため免許更新手続きも厳しくなりました。

 

でも多くの高齢者の方々は「生活の足がないから」と運転を続けられているのです。核家族化の結果、高齢世帯、独居高齢者が増加しその多くは生活のための足を持ちません。

 

政府は「交通弱者のための公共交通機関の充実」を重要な政策の一つに挙げています。地域の自治体も地域巡回バスや通院バスの運行を行っています。

 

車社会の中で郊外に大型のショッピングセンターの設置が増え、そのあおりで従来からの町の小規模小売店がつぎつぎに閉鎖し身近な場所での買い物は難しくなっています。このことも独居高齢者の生活継続を難しくする要因になっています。

 

生活の足がない…(画像はイメージです/PIXTA)
生活の足がないから…(※画像はイメージです/PIXTA)

道路状況が厳しい地域から通院を続ける患者たち

著者は普段、何気なく受診される患者さんを診察しています。しかし中には道路状況が厳しい地域から通院されている方も多いと改めて感じます。

 

「雪かきしたため腰が痛い」と84歳のSさん。

 

「それは大変でしたね。誰かやってくれないのですか?」

「一人暮らしだから誰もやってくれない。雪かきしないと買い物にも行けない」

 

続いて入ってきた80歳のKさんも「私も雪かきで大変だった」。そう言えばKさんも独居です。雪国では雪が降れば主要道路はすぐに除雪されます。しかし家から道路へ出るまでの道までは行政の手も回らないようです。

 

豪雪地帯では雪が降ればボランティアが屋根の雪降ろしをしたり雪かきもしてあげるようですが、SさんやKさん達の地域はそんな活動もないようです。

 

でも決してこの地域の人々、若者が人情味がないと言うのではありません。地域の過疎化、高齢化の進行によりボランティアとなる若者がいないのが現状なのでしょう。

子供らは来いというけれど…独居老人が増加のワケ

それにしても何と独居の方が多いことか。SさんにしてもKさんにしても子供さんはいます。

 

しかしそれぞれ都会に出てそちらで家を構えています。「子供らは来いと言うけれど、住み慣れた所が一番いい。身体が動くうちは行かない」ようです。

 

皆さん80歳を超えていますが、雪かきをするくらいですから自力で歩けお元気です。この方々は介護保険のお世話にもならずデイサービスも利用されていません。「動けるうちは自宅で」。それが一番なのかもしれません。

 

認知症や自立度の低い方には様々な介護サービスが講じられています。でも自立生活を維持されている独居高齢者の方々がお元気で過ごされその生活を維持されるような体制づくりの充実も望まれます。通院や外出支援、お買い物支援、そして雪が降った時などは雪かき支援などです。

 

 

※本記事は連載『新・健康夜咄』を再構成したものです。

 

 

 

髙山 哲夫

国民健康保険坂下病院名誉院長

 

 

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国民健康保険坂下病院 名誉院長

1945年 松本市で生誕

1970年 名古屋市医学部卒業

1985年 国民健康保険坂下病院院長

2013年 国民健康保険坂下病院名誉院長

2006年4月より「社会保険旬報」に「随想―視診・聴診」を連載

著者紹介

連載新人医師必読!ベテラン医師の日常エッセイ「健康夜話」

新・健康夜咄

新・健康夜咄

髙山 哲夫

幻冬舎メディアコンサルティング

最新医療機器より大切なものは、患者さんを想う心――。著者のところには、がん、糖尿病、嚥下困難、胃ろう、認知症、独居うつ、褥瘡など、様々な病気をもつ高齢の患者さんがやってくる。地域の高齢な患者さんの声に真摯に耳を…

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