本記事は株式会社財産ドック著『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の法令・税制等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

「まずは立ち退きさせろ」そんな余裕もないのに…

解決策1 解体、立ち退き処理なしでアパートを売却

 

評価額の高い借地権に加え、小規模宅地等の特例が使えない状況を踏まえると、そのままこの土地にこだわらず売却する方向性が見えてきます。売却して節税効果と納税資金を考えた上で新たな住居を探す方が明らかに賢明です。

 

そこで今度はこちら側から不動産会社に借地を買ってくれという交渉をしました。すると不動産会社は土地を買い取るのはやぶさかではないが、それだったらアパートの入居者を全員立ち退きさせてから、という条件を提示します。

 

 

これは常識的に考えれば当たり前の主張ではありましたが、Dさんの年齢、病状、体調の面を考えると立ち退きなどで何カ月もの時間をかけるとその間に何が起こるかわからないので、なるべく早めに対策を進めなければいけないと感じていたのです。

 

そこで立ち退きをしないまま売却する方向で交渉することを考えました。実のところ、アパートの全入居者を立ち退きさせてしまうことは、不動産会社にとって本当に適切とは言い難かったのです。

 

不動産会社は借地を購入した後には、おそらく分譲して活用していくことになります。ただ150坪もある土地です。そのすべてを分譲して活用するのもありかもしれませんが、アパート1棟を残していても十分に活用できるはずです。そこで相手に区画割りをしてみてください、と伝えます。区画割りをすればアパートを残すべきかどうかが見えてくるからです。

 

また、実はアパートをそのまま残しておけば、買い取った後もすぐ収入が得られるというメリットもあります。アパートの入居者を追い出してしまうと分譲してマンションなどを建てて収益を出すまでは無収入の土地になってしまいますが、アパートをそのまま経営していればその間でも家賃収入が手に入ります。

 

さらには、こちらで立ち退き処理をしないにしても、土地を売却する金額の総額から立ち退き料として必要になる分を差し引くことにしました。立ち退き料は1人当たりの入居者の家賃、年収、入居年数などを考慮して、これだけの金額を渡せば断られることはないだろうという金額を試算しています。また、解体する場合の費用も総額から差し引いて、家主にはオーナーが代わったということを伝えての引き継ぎも行うという条件をつけました。

 

そこまで提案したところで、不動産会社は合理的な試算に基づいているし、決して損することにはならないと納得して、アパートもそのまま買い取ることを決めてくれました。これによって、次の対策へもスピーディーに取り組めることになったのです。

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税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

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