コロナ禍において資産運用の不確実性が増す中、市場に対して低ベータである「リアルアセット」に注目が集まっている。そこで本記事では、英国Sanlam Asset Management社のマルチアセットビジネスの責任者を務めるマイク・ピンゲーラ氏に、その魅力について伺った。聞き手は、ニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)のダイレクター幾田朋彦氏である。

デフレやディスインフレに対するリスクはあるのか

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

幾田    お話の中でリアルアセットの収益源の多くがインフレに連動するとおっしゃっていたと思いますが、今日の状況でインフレ率が上昇するかと言われると、非常に難しい気がいたします。今日の利回りは高いかもしれませんが、これが将来に渡って継続することを期待してよいものでしょうか? それに関連してマイクさんがリアルアセットに投資する上で、気をつけている点やリスクについてお聞かせいただけますか?

 

マイク    先程申し上げた通り、現状のリアルアセット戦略の利回りは約4%です。そしてこれは、世界中の国債利回りとの比較でいえば非常に高水準であると言い切ってしまって良いと思います。たしかにデフレやディスインフレの環境下ではインフレに連動した収入源は不利に働くかもしれませんが、全世界的にこのような現象が同時に起こることは稀です。現在のような低インフレ環境が続き、インフレの急増が見られない場合、リアルアセットの収入はゆっくりと上昇し続けることはあっても、縮小することはありません。

 

別の見方として、現在の極端な規模の金融緩和、グローバル化の解消、中央銀行の独立性の低下がもたらす潜在的なリスクを考えると、コロナ禍が収束した直後にインフレが短期間に上昇するシナリオもありえると思います。ここで強調したいのは、インフレ連動の収益源は将来インフレが上昇した際のヘッジになりうるという点です。

 

我々が投資判断を下す際は常に潜在的なリスクについて考えることに多くの時間を費やしています。運用する戦略には36銘柄ほど保有していますが、これらの銘柄への投資を通じて合計57ヵ国にまたがり、64の異なる資産タイプへのエクスポージャーを持っています。当然、それら固有のリスクを常にかかえているわけで、1つの会社、国、または資産の種類に依存することなく、リスクを最小限に抑えて管理できるようなポートフォリオを構築することに苦心するわけです。

 

それを踏まえた上で、この資産クラスにとっての最大のリスクはインフレ率が上昇しないまま、国債の利回りが大幅に上昇することだと思います。仮に各国政府の10年債利回りが上昇し、インフレが上昇しない場合、相対的に債券の魅力度が増すため、投資家の資金がリアルアセットから債券その他へ流れていってしまうでしょう。現実には現在の各国政府債の利回りがリアルアセットと同程度までインフレ不在のまま上昇しなければいけないので、これが起こる可能性は非常に低いのですが、さりとて絶対に起こりえないシナリオというわけではありません。

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本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、Sanlam Asset ManagementおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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