コロナ禍において資産運用の不確実性が増す中、市場に対して低ベータである「リアルアセット」に注目が集まっている。そこで本記事では、英国Sanlam Asset Management社のマルチアセットビジネスの責任者を務めるマイク・ピンゲーラ氏に、その魅力について伺った。聞き手は、ニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)のダイレクター幾田朋彦氏である。

コロナ禍におけるリアルアセットの安定性

幾田    コロナウイルスのニュースについて見ない日はない期間がしばらく続いていますが、この特殊な環境下でリアルアセットはどのような反応を見せましたか?

 

マイク    不確実性がピークに達していた2020年3月まで遡りましょう。正直、この時の市場の動きから我々が運用するポートフォリオを守ることは非常に困難でした。隔離を目的とした市街の封鎖は迅速に行われ、投資家は企業にどのような影響が出ているのかをしきりに尋ねていましたが、当初は空白期間がありました。企業自体がウイルスやそこから派生した封鎖による影響を適正に評価するための情報が不足していたためです。投資家との本格的なコミュニケーションが始まったのは、そこから数週間経ってからのことだと思います。

 

蓋を開けてみれば、我々の保有するリアルアセットについては、経営状況や、裏付け資産につけられていた長期契約への影響が軽微であることがわかると、リアルアセットの価格は急激に回復しました。影響の内訳を資産別にお示しすると、再生可能エネルギーへの投資が全期間を通じて非常に強いパフォーマンスを叩き出し、一部銘柄では年初来で60%以上増加しています。

 

不動産はもう少し結果が分かれました。学生寮などはかなり高い稼働率を維持しているにもかかわらず、回復のペースが弱いままです。しかし、在宅勤務やオンラインでの買い物が増えた影響でデータセンターや物流施設は非常にうまく機能しています。どちらかといえば中庸の結果で着地した分野として安定性に定評のある学校、道路、病院等のインフラがあります。総じて見ればリアルアセットは、この前代未聞の危機環境下でも期待どおりに機能したといえるでしょう。

 

こうした現象は今回が初めてではなく、実は金融危機の時も同じような結果に終わっています。金融危機時も最初は世界が終わるかのような混乱が市場を襲い、1、2ヵ月の間に原資産の回復を示す企業のコミュニケーションが出回りました。金融危機にせよ、ウイルスにせよ、学校はまだそこにあり、道路は健在であり、病院も破壊されたわけではありません。今回も当初は混乱に見舞われたものの、価格下落によって上昇した配当利回りの魅力もあり、時価はすぐに適正水準まで回復しました。今は多くの国で第2波、第3波の感染拡大に備えているわけですが、過去の波を順調にこなした企業は、第2波または第3波でも引き続き良好な位置にある可能性があります。

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本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、Sanlam Asset ManagementおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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