コロナ禍において資産運用の不確実性が増す中、市場に対して低ベータである「リアルアセット」に注目が集まっている。そこで本記事では、英国Sanlam Asset Management社のマルチアセットビジネスの責任者を務めるマイク・ピンゲーラ氏に、その魅力について伺った。聞き手は、ニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)のダイレクター幾田朋彦氏である。

リアルアセットの流動性を確保するには?

幾田    形や構造にとらわれない、と言いつつ、あなたは上場有価証券に自身の投資ユニバースを限定しています。それはどうしてですか?

 

マイク    私たちは投資家に対して日次の流動性をお約束しています。したがって、私たちが所有するものはすべてお約束した流動性が確保できる上場有価証券であり、流動性ミスマッチの発生しうる資産には投資できないのです。

 

幾田    最初にお会いした際に、ドッド・フランク法や金融市場における一連の規制強化が原因で、プライベート・エクイティのようなファンド業者が上場市場で資金調達をすることが多くなったとおっしゃっていましたね。この傾向はあなたが運用する戦略にどのような影響を及ぼしましたか?

 

マイク    はい。今考えても奇妙な現象ですが、現在の投資戦略を可能にしたきっかけの1つは、2008年の金融危機でした。リアルアセットへの投資は目新しいものではありません。インフラ、住宅、さらには再生可能エネルギーでさえ、長い間存在したものです。金融危機以前は銀行が主要プレーヤーとして存在感を示していましたが、自己資本規制が強化されてからはそれが下火になり、資金の供給が細ってしまいました。投資機会と資金ニーズは依然としてそこにあるのにも関わらずです。これにより、銀行内で活躍の場を失った専門家の多くは組織を離れて独立し、株式市場から恒久的な資本を調達することで活動を継続しました。そのため、私たちは以前であれば株式市場を通じてではアクセスが困難だった投資機会が増えています。我々の戦略で保有している銘柄も、経営陣がかつてゴールドマン・サックスやHSBC等の一流の銀行で働いていた専門家が腕を奮っている例が数多くあります。

一般的な株式投資と比較してパフォーマンスは?

幾田    リアルアセットのパフォーマンスは一般的な株式と比較してどのように動くのでしょう?

 

マイク    リアルアセットのパフォーマンスは市場への感度が低い、言い換えれば市場に対するベータが低い傾向があります。これにはいくつか理由があります。1つは原資産の性質です。リアルアセットの原資産は特定の契約に基づく長期のキャッシュフローを生む資産を裏付けとしていることが多く、安定性の高い収益源を持ちます。 2つ目は利回りの絶対水準が高いことです。リアルアセットの収入は非常に堅調であり、市場が低迷している時期に利回りが高くなると、安定性を求める投資家を引き付ける傾向があります。上場有価証券である以上、株式市場のボラティリティから完全に無縁でいられるわけではありませんが、少し長めの時間軸でみれば市場に対する感度が相対的に低くなる傾向にあります。

「利回り5%弱、20年近い契約」の例も

幾田    リアルアセットが生む長期的な収入の流れや、その水準について具体的な例とともにもう少し詳しく教えてください。

 

マイク    我々が運用するポートフォリオの利回りは現時点で約4%です。裏付けとなる資産の寿命と契約期間は最大で30年に及ぶものもあります。寿命は、風力発電所の場合は30年、病院の場合は25年程度でしょうか。最近の例では、あるスーパーマーケット用の不動産を所有する企業がコロナ危機の真っ只中で5%弱の利回りで残存約18年のリース付資産を取得することができました。このリース収入は100%インフレに連動しており、契約期間も20年近くと長めで、継続的な成長が期待できます。

次ページコロナ禍におけるリアルアセットの安定性

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、Sanlam Asset ManagementおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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