「マスクマップ」でマスク在庫状況が分かる
一連のマスク対策で重要だったのは、〝問題を処理する順序〞でした。我々はまず対面式あるいは紙ベースでしか対応できない人について処理を行い、その方式を進める中で「もっと便利で早い方法を使いたい」という声に対応していきました。その結果、中央部会の各部局、外局、自治体のスマートシティ事務局、薬局、民間の科学技術関連企業など、あらゆる分野、機関を跨いで全体を統合することで、マスク政策は一歩進んだものになりました。
マスクの実名販売制を進めた際、最初はコンビニでマスクを販売し、後に薬局での販売に切り替えました。コンビニでの販売期間はわずか3〜4日だったと思いますが、この間に大きな混乱が起こりました。どこのコンビニにどれだけの在庫があるのかがわからなかったことが、この混乱の原因でした。海外でも大きな話題となった台湾のマスクマップのアイデアは、こんな状況から生まれてきたのです。
マスクマップができるきっかけは、台湾南部に住む一人の市民が、近隣店舗のマスク在庫状況を調べて地図アプリで公開したことから始まりました。私はそれをチャットアプリ「Slack(スラック)」で知りました。政府の情報公開やデジタル化を推進するスラック上のチャンネルには、8000人以上のシビックハッカー(政府が公開したデータを活用してアプリやサービスを開発する市井のプログラマー)が参加しており、コロナ対策に限っても、当時500人以上のシビックハッカーがいました。
私がマスクマップを作ることを提案し、行政がマスクの流通・在庫データを一般公開すると、シビックハッカーたちが協力して、どこの店舗にどれだけのマスクの在庫があるかがリアルタイムでわかる地図アプリを次々に開発しました。これによって、誰もが安心して効率的にマスクを購入できるようになったのです。
このような経緯で、台湾における新型コロナウイルス感染症防止の重要なポイントだったマスク対策は成功を収めることができたのです。
政府と民間の信頼関係の象徴となった全民保険制度
先に述べたように、台湾におけるマスク対策のベースとなったのが、国民皆保険制度にあたる「全民保険制度」でした。これは台湾の人々が、政府の中央健康保険署に大きな信頼を寄せている証でもあります。もし、多くの人々が政府よりも民間の保険会社を信頼し、保険会社がビジネスとして競争力を有し、責任を持って人々の健康を支える状態であれば、「全民保険制度」がこれほどうまく機能するという状況は到底出てこなかったはずです。
では、なぜ台湾では、多くの人々が政府の保険を信頼しているのでしょうか。それは、全民健康保険争議審議会で話し合われるあらゆるプロセスが、原稿の一言一句まで透明化されているからです。これは私がデジタル担当政務委員に就任する以前から、そのようなシステムになっています。政府は、健康保険の審議会で改正があるたびに、すべての資料を透明化し、どのような作業が進んでいるのかを国民に公開しています。