病院経営者の悩みは増える一方です。地域医療構想など医療行政の長期的変化、診療報酬改定、医療技術の高度化への対応、足元での収益力低下、厳しさを増す人材不足・採用難、経営者自身の高齢化、そして、後継不在。ここでは病院M&Aを検討するうえで知っておきたいメリット・デメリットについて、譲渡側・譲受側の双方から解説します。※本連載は、矢野好臣氏、余語光氏の共著『病院M&A』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

法人格もスタッフも「そのまま」存続

●医療法人格の承継

 

譲渡側にとっては、医療法人の解散という面倒な手続を避けることができます。また、長年続いてきた医療法人の名前が消えず残っていくことに精神的な価値を見いだされる場合もあります。

 

譲受側にとっては、現在は新設できない出資持分ありの医療法人格を所得できるという点にメリットを感じるケースもあります。また、仮に医療法人が赤字の場合は、繰越欠損金を既存事業の利益と相殺できることもあります。

 

●病院スタッフの雇用維持

 

通常、病院M&Aにおいては医師や看護師、コメディカルなどのスタッフはそのまま雇用が続けられます。そもそも、スタッフの雇用契約は医療法人との間で交わされるものであるため、医療法人の運営者が代わっても影響はないためです。

 

一方、譲受側から見ると、新規に採用活動をするコストが不要というメリットとなります。また、人材という観点からは、仮に前理事長を一定期間継続雇用することをM&Aの条件とすれば、当面新たに理事長を探してくる時間を稼ぐことが可能です。

 

ただし、スタッフの承継は既存の病院の文化や不文律のようなものも引き継ぐことを意味するため、M&Aを機に経営を刷新して新しい病院に生まれ変わらせようとする場合に、それがマイナスに作用する可能性もあります。

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医師・看護師を守り地域医療を存続させる病院M&A

医師・看護師を守り地域医療を存続させる病院M&A

余語 光

幻冬舎メディアコンサルティング

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