新型コロナ禍によって外出自粛で“プチペットブーム”だともいわれている。少子高齢化の日本では、家族の一員、我が子同然のように、生活をともにする飼い主も多く、ペットとの関わりはより強くなっている。ペットのお医者さんの獣医師はどのような人が目指しているのか。獣医師国家試験の大学別合格者ランキングをジャーナリストの伊波達也氏が解説する。

“動物のお医者さん”になるのは約4割

私立大学も古くからの伝統校がある。

 

3位の日本大学(生物資源科学部獣医学科)は、動物医療を通して、動物とヒトの福祉に貢献する“獣医師”を養成するという理念を掲げる名門校だ。

 

5位の日本獣医生命科学大学(獣医学部獣医学科)は2006年より日本獣医畜産大学から名称を変更し、学校法人日本医科大学傘下に入った。日本初の私立獣医学校として1881年に開講した伝統校だ。

 

8位の麻布大学も“臨床の麻布”と言われる名門校だ。学校法人麻布獣医学学園の前身東京獣医講習所は1887年(明治20年)の開所だ。

 

10位の大阪府立大学(生命環境科学域獣医学類)は、公立唯一の獣医学部だ。人と動物の調和や、食の安全、バイオメディカル研究、生態系改善などで社会に貢献するとしている。

 

それぞれ特色を持つ獣医学部だが、獣医師国家試験合格後の進路はどのようなものがあるのだろうか。

 

いわゆる“動物のお医者さん”として、小動物の臨床活動に入るのは約4割だという。

 

その他の職種は、大学の附属病院勤務や研究関連職はもちろん、動物園の獣医師や競走馬を診る仕事、家畜産業に携わり、動物の輸出入の検疫と伝染病の予防、食肉鶏卵乳製品などの食の安全、人と家畜の共通感染症の予防などの現場で公務員として働く場合もある。ただし、この分野では人手不足が深刻だとも報じられる。

 

ペット治療は多岐にわたるが、近年では、高度化と専門性を備えた「ほぼ人間並み」の臨床がおこなわれている。

 

かかりつけ医であるゼネラリストは、人間の小児科医のように横断的に、目、皮膚、耳、歯、肺、心臓、脳・神経系、消化器、肝胆膵、腎、生殖器、内分泌、骨・関節、心の病、がん、感染症といったあらゆる知識と経験が必要だ。

 

飼い主とのコミュニケーションにより、ニーズを理解することも大切だし、日頃のペットのケアに対するアドバイスをしたりもする。ペットが亡くなったことによる飼い主のペットロスに対するフォローなどという仕事もある。

 

そして、それらのなかの特定の分野に専門特化したスペシャリストと言われる獣医師もいる。検査機器や治療設備の高度化も進んでいる。

 

また、近年、注目されるのはアニマルセラピーだろう。今後はさらに、高齢者の介護の現場においてや、精神的な病に悩む人などに対してや、グリーフケアといったところで、獣医師は、医療や介護職などと連携して、重要な役割を果たすことにもなりそうだ。

 

このように職種が多岐にわたり、動物への愛に満ちた仕事である獣医師は、やりがいがあるだろう。

 

2021年の獣医師国家試験もまもなくだ。今年も人と動物の架け橋になるような、優秀な人材を輩出してくれることに期待しよう。

 

伊波達也

編集者・ライター

 

 

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