相続にまつわるトラブルは、「えっ、そんな小さいことで」ということで起こりがちです。原因のひとつが葬儀費用。故人を送る葬儀が、家族の仲を引き裂くことも珍しくないのです。編集部に届いた葬儀費用にまつわるトラブルについて、相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の戸﨑貴之税理士が解説します。

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突然の父の死。葬儀は大々的に行われたが…

そんなAさんが亡くなったのは突然のことでした。出張先のホテルで倒れていたのです。

 

「お酒の飲み過ぎだったと違います? 毎晩のように飲みに行って派手にやっていたみたいですから」

 

葬儀は参列者も驚くほど豪華なものでした。突然の不幸に立つのもやっとというD子さんに代わり、喪主はBさんが務めました。そんな葬儀に参列した人からは驚きの声があがりました。

 

「Aさん、社長さんですから、お葬式がちょっとは派手になるの、分かりますよ。でもあんなに大きな花ばかり……テレビでも出ている、有名人のお葬式かしらって」

 

葬儀場はまさに豪華絢爛という言葉がふさわしいほど、花で埋め尽くされていたといいます。通夜も終わり、親戚一同がAさんの眠る隣の部屋で思い出話に花を咲かせていた時のことです。

 

「Aさんが眠っている部屋から、いきなり怒鳴り声が聞こえてきたんです。本当に驚きました」とAさんの親戚はみな口を揃えています。

 

「はじめは親戚全員で食事をとっていたんです。そしたらBさん、Cさん、D子さんがそそくさと隣の部屋に行ってしまって。どうしたのかな、と不思議に思ってはいたんですが……」

 

どうしたものかと耳をたてていると、こんな会話が聞こえてきました。

 

Bさん「俺が喪主なんだから、葬式をどうしようが自由じゃないか!」

 

Cさん「だからって限度があるだろ! 500万円だなんて、どこにそんな金があるんだ」

 

Bさん「どこって…親父の遺産と、俺たちで折半すれば足りるって」

 

CさんとD子さんは葬儀費用について、当日まで何も知らされていませんでした。病気がちなD子さんに代わってBさんが喪主を務めており、相談すらしてくれなかったのです。葬儀場との話し合いなどは、すべてBさんが行っていました。

 

Cさん「お前がひとりで決めたことに、母さんと俺を巻き込むな。遺産だってちゃんと分配されるはずなのに、勝手に使い道を決めるなんてありえない」

 

Bさん「これは家族の問題だろ! 親戚みんな呼ぶんだぞ。貧相な葬儀をしたら恥をかくのは俺もお前も同じだ!」

 

D子さん「二人とも、お父さんの前でやめて!」

 

父親が眠る棺桶の前で、家族が大ゲンカ。大声でわめく兄弟と、2人の間で右往左往して涙で絶叫する母親……それはまさに修羅場でした。

 

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次ページ解説:葬儀費用は相続の対象になるのか?

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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