2021年のドル円相場見通し

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●リスクオンのドル安は継続へ、ただ円も売られやすいため100円を超える円高定着の可能性は低い。

●米景気回復が進むにつれて、米長期金利が緩やかに上昇し、ドル高・円安の流れに転じるとみる。

●2021年末のドル円は107円を予想、年間の値幅は2021年もまた比較的小さいものにとどまろう。

リスクオンのドル安は継続へ、ただ円も売られやすいため100円を超える円高定着の可能性は低い

2021年のドル円相場は、緩やかなドル安・円高の流れがしばらく続いたあと、次第に緩やかなドル高・円安の流れに転じると予想します。米ドルは現在、①供給超過で、②実質金利がマイナスのため、市場がリスクオン(選好)に傾くと、対主要通貨で売られやすい状態にあります。①は、米連邦準備制度理事会(FRB)がコロナ・ショックを受け、3月に量的緩和を復活させたことなどによるものです。

 

②は、FRBの金融緩和で米長期金利が低位安定的に推移する一方、トランプ米政権の大型経済対策などで期待インフレ率が上昇したことによるものです。このような米ドルを取り巻く環境に、当面大きな変化はないと思われることから、リスクオンでドル安・円高が進みやすい地合いは続くとみています。しかしながら、リスクオンでは日本円も売られやすいため、100円を超える円高が定着する可能性は低いと考えます。

米景気回復が進むにつれて、米長期金利が緩やかに上昇し、ドル高・円安の流れに転じるとみる

日米の金融政策は、ドル円相場の方向性に大きな影響を与える要素の1つですが、日銀もFRBも、2021年に緩和的な金融政策を修正する公算は小さいと思われます。ただ、金融緩和が維持されることにより、日本と米国の実質GDP成長率は、2020年のマイナス成長(それぞれ前年比-5.2%、-3.5%)から、2021年はプラス成長(同+2.8%、+5.0%)に転じる見通しです。

 

また、市場参加者の「思惑」も、ドル円相場の方向性に大きな影響を与えます。米景気の回復につれ、市場参加者はFRBによる将来的な資産購入額の段階的な縮小(テーパリング)を徐々に意識することが予想されます。この場合、FRBが実際に金融政策を変更しなくても、米ドルの供給超過状態はいずれ解消に向かうとの思惑がゆっくりと市場に広がり、緩やかな米長期金利の上昇とドル高・円安の動きが見込まれます。

2021年末のドル円は107円を予想、年間の値幅は2021年もまた比較的小さいものにとどまろう

2021年6月末時点で、米10年国債利回りは1%、ドル円は105円を予想します(図表1)。年後半も、米10年国債利回りはゆっくりと水準を切り上げ、それに連れてドル高・円安が進み、2021年12月末時点で、米10年国債利回りは1.3%、ドル円は107円に達すると想定しています。ただし、コロナの更なる感染拡大などで、米国景気が長期間低迷した場合、緩やかな米長期金利の上昇とドル高・円安の見通しは、修正せざるを得ません。

 

(注)データは2015年1月から2020年11月。月末値を使用。2020年12月18日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。太線は予想レンジの上限と下限。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ドル円の予想レンジ (注)データは2015年1月から2020年11月。月末値を使用。2020年12月18日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。太線は予想レンジの上限と下限。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

なお、ドル円は年間の値幅が縮小傾向にあります(図表2)。これは、日米長期金利水準の低下によるドル円の金利感応度の低下や、日本の経常収支構造の変化(経常黒字に占める貿易黒字の割合低下と第1次所得収支の黒字の割合上昇)などによるところが大きいと考えます。このため、ドル円の年間の値幅は、2021年も比較的小さいものにとどまる可能性が高いと思われます。

 

(注)値幅の単位は円。2020年は12月21日まで。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]過去48年間のドル円の年間値幅 (注)値幅の単位は円。2020年は12月21日まで。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年のドル円相場見通し』を参照)。

 

(2020年12月22日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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