本記事は、2017年6月23日刊行の書籍『人生を破滅に導く「介護破産」』を一部抜粋し、再編集したものです。その後の法改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本来、施設の種類によって「入居」「入所」と書き分けるべきですが、文章の分かりやすさに配慮し、すべて「入所」に統一しています。

「無口でがんこなタイプの父親」の介護はどうする?

突発的な病気で入院。要介護状態になった

ひとり暮らしをしていた父親が自宅で倒れ、一命はとりとめましたが右半身に片麻痺が残り、要介護1と認定されました。病院でのリハビリを経て、室内では歩行できるようになりましたが、屋外を歩くのは危険が伴います。

 

本人は自宅への復帰を望みましたが、息子は心配し、自分の家の近くへ転居してくるよう説得しています。しかし、息子の家は同じ県内ではあるものの、父親の家からは車で2時間ほど離れた距離にあります。無口で頑固なタイプの父親は、住み慣れた自宅から離れることに抵抗を感じており、また息子の世話になることもプライドが許さないようです。

 

無口でがんこなタイプの父親
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

突然の病気や事故で親が入院した場合、病院からは1〜2週間で退院を促されるため、子どもは慌てて施設を探すことが多いようです。しかし、本人が在宅復帰を願うのであれば、介護老人保健施設(老健)や回復期リハビリテーション病棟でリハビリを行い、体力をつけて復帰を目指すのがいいでしょう。

 

家族はどうしても「以前と同じくらい元気にならなければ自宅に戻れない」と考えがちですが、本人がリハビリしている間に自宅を改修しておき、自宅に戻った後は複数の在宅介護サービスや配食サービスを利用することで、問題なく在宅復帰できるケースが意外と多いものです。住み慣れた家に戻ることで本人の気力も高まるので、結果的に要介護度を軽くする効果も見込めます。

 

このケースの場合、大がかりな自宅の改修は必要ありません。ベッド横やトイレに手すりを設置する程度でいいでしょう。これらの福祉用具はレンタルでき、月額600円程度で済みます。家の中は自分で動けるので、訪問介護で週に3回、入浴介助と掃除のサービスを受けます。そのほか週に1回、生活援助として買い物を頼み、週に2回、訪問リハビリを受けます。食事は週に4回配食サービスを利用し、そのほかは買い物してもらった食材を使って自炊します。

 

配食サービスを増やしてもよいのですが、コストがかさみます。また配食は飽きてしまう人も多いため、自炊に慣れている人であればある程度自分で調理してもらいましょう。このケースの場合、配食サービスを1食700円として計算すると、介護にかかる費用は月額2万円程度で済みます。

 

[図表1]訪問介護と配食サービスを利用

 

また、この父親は社交的でないため、すべて在宅サービスで組み立てましたが、要介護者が男性ではなく女性の場合や、男性でも外出やほかの人と触れ合うことが好きな人であれば、配食サービスをやめてデイケアやデイサービスを利用することをお勧めします。

 

具体的には、週に2回デイケアに通います。デイケアでは入浴や食事のサービス、リハビリなども含まれていますので、配食サービスの利用が不要になり、その他の訪問介護、リハビリも減らします。デイケアを利用しない日には、訪問介護により入浴介助と掃除を週1回、買い物などの訪問介護を週3回利用し、訪問リハビリを週1回利用します。

 

この場合も介護にかかる費用は月額2万円程度で済みますし、外出してほかの人たちと触れ合うことが心身のリフレッシュにもなり、生活へのモチベーションを高めることにもつながります。

 

[図表2]訪問介護の代わりにデイケアを利用
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人生を破滅に導く「介護破産」

人生を破滅に導く「介護破産」

杢野 暉尚

幻冬舎メディアコンサルティング

介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に至る──といういわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。 親の介護には相応のお金がかかります。入居施設の中でも利用料が安い…

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