企業が事業投資として書籍を出す「企業出版」は、集客・販促、採用、周年事業といった企業のさまざまな課題解決において大きな力を発揮します。本連載では、商業出版との違いなどの基本知識から、企業出版の実践(書籍マーケティング)で成功を収めるための具体的なノウハウまで、株式会社幻冬舎メディアコンサルティングで取締役を務める佐藤大記氏が詳しく解説します。

書籍は伝えたい情報を「正確・大量」に伝えられる媒体

企業出版では大きく6つの業界、「不動産」「金融・投資」「士業」「医療・介護」「教育」「B to B」を主要ターゲットにしています。今回は、主要6業界のうち、「医療・介護」について、医療分野の「眼科」を例に説明していきます。

 

日本の医療サービスは、公的医療保険を使った保険診療と、医療保険が適用されない自由診療の2種類に大別できます。通常の治療は保険診療ですが、がんの先進治療や代替療法、美容整形、歯科のインプラントなど特別な医療を受ける場合、通常は全額自己負担の自由診療になります。

 

社会保障費の増大で公的保険制度の先行きが不安視される中、医療機関では安定収入の確保を狙う上でも自由診療に注力するところが増えています。自由診療は専門性が高いものが多く、治療費も高額なため、医療機関側は医療内容についてより詳しく説明するように努めています。

 

ただ、医療機関の「広告」のあり方は厳しく定められており、医療機関のホームページ等に関しても「医療広告ガイドライン」で細かく規制されています。たとえば「必ず治る」とか、「絶対に安全」などとは明記できず、あいまいな情報提供しかできないのが実情です。医療機関としては自由診療に力を入れたいけれど、ネット上では自分たちの独自のメソッドをうまく伝える術が大きく制限されています。

 

一方で、患者側は高額で、自分の健康や命にかかわることですから、医療機関選びには極めて慎重です。しかし、上記の理由もあってネット上の情報は正確性や信憑性に乏しく、医療知識の少ない一般の人はどの情報が信じてよいのか分からず、自身にとって適切な医療機関や専門家を探し出すのに苦労しています。

 

ここで絶大な効果を発揮するのが「書籍」です。著者である医師が自分の言葉を通して、伝えたい情報を正確かつ大量に伝えられる唯一の媒体といっていいでしょう。

保険診療の分野でも企業出版は抜群の効果を発揮する

企業出版は自由診療との相性が抜群ですが、保険診療の分野でも多くの書籍が出ています。保険診療においても伝えるべき情報は数多くあり、自分の理念や考え方を正確に伝えたいドクターは少なくありません。

 

たとえば、『死ねない老人』(2017年2月刊)です。著者の杉浦敏之氏は長年、高齢者医療に携わってきた医師です。先生によれば、大きな病気もなく、経済的にも家族関係にも恵まれているにもかかわらず、「死にたい」という思いに駆られる高齢者が少なくないそうです。そうした増え続ける「死ねない老人」の実態を解説した上で、その背景や解決策を提示した本書は大きな反響を呼びました。

 

自由診療にせよ保険診療にせよ、医療は人の健康と命にかかわるだけに、患者は正確な情報を求めています。医療機関・ドクターの側も、独自のメソッドや正しい情報、自院の理念や思想を伝えたいと切に考えています。その「橋渡し役」として書籍は最高のツールだと確信しています。

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