書店に並ばなければ「本は売れない」
幻冬舎メディアコンサルティングが手がける企業出版は、グループ会社の幻冬舎が1993年の創業以来、多くのベストセラー、ミリオンセラーを世に送り出す中で培ってきた「つくる」「知らしめる」「売る」という3つの強みを最大限に生かし、新しい出版モデルとして独自につくりあげたものです。
「つくる」とは、企画・編集力です。ミリオンセラー、ベストセラーを生み出す幻冬舎ならではの出版ノウハウを法人に当てはめることによって、企業の「伝えたい」想いを読者の「知りたい」内容に変換します。次に、絞り込んだ読者ターゲットに告知する広告宣伝力(知らしめる)。そして、幻冬舎が積み上げてきた書店との信頼関係を駆使した流通力(売る)です。この3つの強みが、まさに「企業出版の成功ノウハウ」として結実しています。
前回まで4回にわたり、「つくる」と「知らしめる」について述べました。今回は「売る」について説明します。
企業出版でどんなに優れた書籍をつくっても、書店に並んでいなければ売れません。書店には問題意識や課題解決意欲の高い人が訪れますが、そこできちんと待ち構えていないと意味がないのです。具体的には、書籍の出口戦略として、リアル書店での平積み、面出し(面陳)ができる流通基盤が重要になります。
幻冬舎は、全国105法人4000店の書店とネットワークを築いています。この4000書店で書店全体の売り上げの約76%を占めており、それらの書店と特約を結んでいます。
書籍の発行は幻冬舎メディアコンサルティングですが、発売は幻冬舎です。企業出版の本は、あくまでも幻冬舎発売の本として流通しています。幻冬舎の通常のベストセラー、ミリオンセラーと同じ流通ラインで動いているというのが当社の強みです。
平積みや面出しなど書籍が目立つ「売り方」の仕掛け
私たちは特約を結ぶ書店に対して、棚差しではなく、平積みや面出しなど、書籍が目立つように並べてもらうようお願いしています。これは幻冬舎がベストセラー、ミリオンセラーを多数つくり、それらの書店に優先的にお届けするなど信頼関係を積み上げてきたからこそ可能なことなのです。確かに、企業出版の本はニッチでベストセラーにはなりにくいという面もありますが、書店は一般の本と同じように並べます。
著者が有名か無名かは関係ありません。したがって当社の企業出版では、著者が誰であっても、著名な作家や経営者の書籍の隣に並ぶことが可能になります。
この流通基盤は当社のビジネスモデルの根幹です。他の出版社と比較して大きなアドバンテージがあると自負しています。ミリオンセラー、ベストセラーの実績がない出版社の場合、平積みや面出しをお願いするのは簡単ではありません。書籍の出版を検討している企業には、出版社を選ぶ際に、そういう実績があるかどうかも確認することをおすすめしています。
コロナ禍の現在、ビジネス書の販売は非常に好調です。出版取次大手の日本出版販売の調べによると、ビジネス書の売り上げは2020年5月から2021年1月まで9カ月連続で前年同月を上回っています。コロナ禍初期の昨年3月、4月は減少しましたが、その後の販売実績は増加を続けています。
一般的に、地震や台風などの大規模な自然災害が発生すると、人は強烈な不安心理を抱くといわれています。その結果、新しい知識の習得や、知識のアップデートのために本を読もうという動機が生まれやすくなります。
コロナ禍も同様だと思います。違うのは、テレワークで在宅時間が増えたことや、イベントや旅行に出かけられないなど余暇の過ごし方が変わったことです。つまり、上記の不安心理とは別の要因でも、読書に目を向ける人が増えていると思われます。
いまは、これまで手を伸ばさなかった分野の本にも、積極的に手を伸ばしてみようという動きが促進されていると感じています。自分のもともとの関心領域以外の本にも目を向けるようになっているのです。自分にとってど真ん中の本ではなくても、これから必要になるかもしれない、勉強のために読んでみようかといった具合です。
コロナ禍で「都心よりも郊外の書店」の売れ行きが好調
そうした背景もあり、当社の本も売れゆき好調です。私たちは課題解決型の本をつくっていますが、読者にとって最初はど真ん中ではなくても、少しかすっているということで手に取ってみる、そして読んでみたら、じつはど真ん中だったということで、セミナーに参加するなどアクションを起こす。コロナ禍でそうした読者が増えていると、私たちは分析しています。
ちなみに、書籍はネットでの売れ行きもよいですが、リアルな書店も負けていません。特にいまは都心よりも郊外の書店で本が売れています。テレワークが普及し、休日も都心に出かけることが減っていることから、全国の幹線道路沿いにある書店、郊外や地元のショッピングセンター内の書店、町中の個人書店での動きが活発です。その総和で書店業界は盛況となっています。
ですから当社としても、企業出版を伸ばしていくうえで、リアル書店とのパイプをこれまで以上に太くしていくことが大事だと考えています。