相続が起きると様々な手続きが生じます。「相続登記」もその一つ。しかし現行法上では特に期限がないことから、登記申請を後回しにする人が少なくないのが現状です。相続に関する手続きに「放置しても大丈夫なもの」はありません。相続登記を放っておいた場合にどのようなリスクが生じるのか、事例をあげて解説します。※本連載は、司法書士さえき事務所所長の佐伯知哉氏の書き下ろしです。

早期処分を望む妹、自分の持分を「共有名義」で登記

Xさんは遺言を残さなかったので、遺産分割協議が必要となります。ところがこのケースでは両者は不仲です。

 

相続人の間で任意に遺産分割協議ができなければ、家庭裁判所に調停を申し立てて裁判所の手続き内で遺産の分割を行うことになります。ここまでくると完全に相続争いが顕在化するので相続手続きは長期化します。

 

相続手続きが長期化すると、遺産をまったく動かせない状態が続きます。放置していた場合もそうなのですが、このような場合にとある問題が浮上することがあります。

 

あまり知られていませんが、実は相続登記は、法定相続人のうちの一人から法定相続分の割合に限り、登記申請することができてしまうのです。本事例の場合だと2分の1ずつの割合で、AさんとBさんの共有名義に登記ができてしまいます。

 

AさんとBさんは不仲のため、案の定、遺産分割協議がまとまりません。そこでBさんは単独でAさんBさん共有名義の相続登記を申請してしまいました。

 

単に法定相続分割合で相続登記を行っただけの状態であれば、後で遺産分割協議や遺産分割調停で決着がつき次第、その内容に従って不動産の名義を変更することができます。

 

ですがBさんは姉と話し合うつもりもなく、裁判所で決着をつけるのも煩わしいので、自分自身の持分である2分の1を売却するなどして、どうにか処分できないかと考えたのです。

「不動産の共有持分」を買い取るビジネスの存在

まず、他の共有者に無断で共有持分を売却できるのかと疑問に思うかもしれませんが、これは可能です。

 

また、通常であれば他人と共有名義になってしまうので、不動産の共有持分など誰も買わないように思います。ですが世の中には色々なビジネスがあり、こういった共有持分を積極的に買い取る業者も存在するのです。

 

Bさんはそのような業者の存在を知り、自己の持分を共有持分買取業者であるC社に売却しました。

 

当然、2分の1の割合といえど、全体を売った場合の50%の価格で買い取ってくれることはありません。もっともっと安い金額になってしまいますが、それでもBさんは早くこの相続問題からドロップアウトしたかったのです。

 

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