さらにカルティエに特注で作らせたルビーとパールのペンダントネックレス。このティアドロップ型のナチュラルパールは1200万ドルの落札価格となり、パールの最高価格をたたき出した。「ラ・ペレグリーナ」と呼ばれ歴史的に知られるこのパールは、55.95カラットの素晴らしい洋梨型のナチュラルパールである。
1500年代初頭にパナマ湾で発見され、後にスペイン王室が所有していたこの巨大なパールは、フィリップ王子2世からの結婚祝いとしてイギリスのメアリー・チューダーに与えられた。1969年、リチャード・バートンはエリザベスのためにこのパールを購入し、カルティエはメアリーの肖像画の宝石に触発され、ルビー、ダイヤモンドを組み合わせたこのネックレスを1957年に制作した。
また、32カラットのDカラーフローレスという最高級のダイヤモンドリング。これは約8億円で落札されたが、もともとは夫リチャード・バートンからのプレゼントであった。
さらにブルガリのエメラルドダイヤモンドブローチ。スプレイ型という20世紀半ばに流行したタイプで、バランスと美しさでは群を抜くものであった。特に来歴の無いものであれば6万~7万ドル程度のブローチであったが、優にその20倍の150万ドルを超える価格で落札された。他にも小物であったはずのゴールドのチャームブレスレットなどが予想価格の20倍に跳ね上がった。セレブレティーコレクションではこのように価格が通常の相場を無視して高騰することがよくある。
いくつか高騰したトップロットの中でもブルガリのサファイアダイヤモンドネックレスは特筆すべきアイテムであった。アールデコ調のデザインでまとめられたこのネックレスのペンダント部分には52カラットのシュガーローフカットのビルマ産のサファイアがセットされ、今ではほぼ入手不可能なクオリティーのものである。
テイラーがそもそもジュエリーに出逢ったのは10代半ばのことで、既に若くして彼女はジュエリー・コレクターとしての道を歩み始めていたのだ。そのころ出た映画やテレビのギャラでジュエリーを買い、勉強熱心だったテイラーはジュエリーについての知識をほぼ独学で学んでいったという。また、ジュエリーの着け方も古典的なマナーやプロトコル(典礼)をわきまえていた。さらに、テイラーの審美眼がすぐれていたことに加えて、彼女の財力と、それに呼応したジュエラーたちのイマジネーションが合体し、長い年月の中で個々の名作が生まれた。
また、様々なオケーションでジュエリーを付けたテイラーは時に特別なジュエリーをジュエラーから借用した。
第65回アカデミー賞でエイズ活動家としてジャン・ハーショルト人道賞を受賞した際に、ヴァンクリーフ&アーペルからこのマルグリット・デイジーの一そろい(パリュール)を借りた。そして後に彼女はこれを購入。以来、1990年代には、オスカー授賞式などでノミネートされた女優が著名ジュエラーに押し掛け、ジュエリーを借りることが大流行する。
筆者がかつて日本総代理店を勤めた全米最大のエステート・ジュエラー、フレッド・レイトンではオスカー授賞式前、ニューヨーク本店に詰めかけるこういった著名女優に豪華なジュエリーを惜しげもなく貸し与えていた。東京にもこういったレイトン社からの貸し出し履歴のあるジュエリーが届き、中でも2003年に開催された東京国立博物館「煌めきのダイヤモンド展」表紙を飾ったバンドーと呼ばれるティアラの一種は、マイケル・ダグラスとキャサリン・ゼタ・ジョーンズが結婚したときに新婦が着用したもので、実物は展覧会前日に到着し、慌てて成田から上野まで手持ちした作品である。
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