アジア・オセアニアリートはリスク選好で上昇
■11月のアジア・オセアニアのリート市場は全ての市場が上昇しました。7日現在、アジア・パシフィック・リート指数(除く日本、現地通貨ベース)は10月末比+12.0%、香港は同+19.0%、シンガポールは同+7.7%、オーストラリアは同+13.8%となっています。米国大統領選挙後の不透明感の後退、新型コロナワクチン開発進展による経済正常化への期待などからリスク選好の動きが強まったことが背景です。
■香港は、リート最大手の市場予想を上回る決算内容を契機に力強い上昇となりました。オーストラリアは、中央銀行による追加緩和や政府による住宅購入者への財政措置が好感され上昇しました。一方、シンガポールは、既に新規感染者数が抑制されており、これまでの下落率が他市場に比べ小幅だったことなどから上昇も小幅でした。
ワクチン普及などで経済が正常化する展開を見据える
■英国では新型コロナワクチンの接種が開始され、米国も12月中の接種開始を目指しています。ワクチンの普及により、2021年以降の世界経済の見通しは従来に比べ改善していると考えます。足元は感染拡大が依然経済活動に悪影響を与えているものの、各国政府・中央銀行による政策が引き続き経済の回復と市場の安定化を支えるとみられます。景気の回復度合いには注意が必要ですが、低金利・豊富な流動性の下、今後、アジア・オセアニアリート市場への資金流入は増加するとみています。
出遅れのオーストラリア、経済活動再開最終段階のシンガポールに注目
■オーストラリアは新型コロナの感染が抑制される中、景気回復の出遅れを取り戻す状況にあります。同国リート市場は金融・財政政策を支えに、これまでのレンジからやや上向きの推移を予想します。シンガポール市場は、徹底した感染対策によって高い評価を維持しており、足元では商業施設・ホテルリートの評価見直しが続くと予想します。政府は年内にも経済活動再開の最終段階(フェーズ3)への移行を発表しています。人の往来を安全に拡大する政府の積極的な取り組みは信頼性が高く、不動産賃貸経営にとって恩恵が大きいとみられます。
■一方、香港市場は、引き続きレンジでの推移を想定します。政府はソーシャルディスタンスを再度強化するなど、新型コロナを巡り一進一退が続いており、外需の回復にも時間がかかる見通しです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『アジア・オセアニアのリート市場は全市場が上昇』を参照)。
(2020年12月10日)
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