●日経平均は10月30日から11月27日までの間で16%上昇、上げ幅は3,667円58銭に達した。
●上げ幅の寄与度の大きい上位5銘柄で寄与率は31.4%、上位100銘柄に拡大なら95.4%に。
●日経平均の急騰は一部の値がさ株が主導、必ずしも日本株全体の勢いを意味するものではない。
日経平均は10月30日から11月27日までの間で16%上昇、上げ幅は3,667円58銭に達した
日経平均株価の10月30日の終値は22,977円13銭でしたが、11月3日の米大統領選挙を経て、大幅高の展開となりました。選挙終了により、米国の政局不透明感が払拭されたことに加え、その後、複数の製薬会社からワクチンの開発進展が報告されたことから、投資家心理が大きく改善し、日経平均株価は11月27日に26,644円71銭の高値で取引を終えました。
つまり、日経平均株価は、10月30日から11月27日までの期間、わずか18営業日で16%上昇し、上げ幅は3,667円58銭に達したことになります。そこで今回のレポートでは、日経平均株価を構成する225銘柄のなかから、上げ幅への寄与額の大きい銘柄を抽出し、その顔ぶれを確認します。また、そこから示唆される今回の株高の意味について、改めて考えます。
上げ幅の寄与度の大きい上位5銘柄で寄与率は31.4%、上位100銘柄に拡大なら95.4%に
3,667円58銭の上げ幅に対し、寄与額が最も大きかったのは、ファーストリテイリングの411円81銭でした。その次に大きかったのは、東京エレクトロンの263円60銭です。以下、順にエムスリーの184円26銭、ダイキン工業の156円86銭、ファナックの135円05銭となっています(図表1)。この5銘柄の寄与額を合計すると、1,151円58銭になり、寄与率は31.4%、すなわち、上げ幅の31.4%に相当します。
図表1は、寄与額の大きい上位20銘柄を示したものです。これらの寄与額の合計は2,264円09銭で、寄与率は61.7%となります。以下、さらに銘柄数を拡大していくと、寄与額の大きい上位50銘柄の場合、寄与額の合計は3,080円44銭で、寄与率は84.0%となります。また、上位100銘柄では、寄与額の合計が3,500円30銭となり、これで寄与率は95.4%に達します。
日経平均の急騰は一部の値がさ株が主導、必ずしも日本株全体の勢いを意味するものではない
日経平均株価は、構成銘柄の平均値によって算出されるため、株価水準の低い銘柄(低位株)よりも、高い銘柄(値がさ株)の値動きに、より大きな影響を受けやすい傾向があります。値がさ株について、株価水準の高い順に上位20銘柄を並べると、図表2の通りになります。この20銘柄のうち16銘柄が、図表1における寄与額の大きい1位から16位までを占めていることになります。
このようにみると、11月に入ってからの日経平均株価の大幅な上昇は、一部の値がさ株が主導していることが分かります。また、前述の通り、日経平均株価を構成する225銘柄のうち、寄与額の大きい上位100銘柄だけで、寄与率が95.4%に達しています。従って、日経平均株価の動きは、日本株全体のごく一部を表しているに過ぎず、日経平均株価の急速な上昇ペースは、必ずしも日本株全体の勢いを意味するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価の上昇を主導する銘柄群は?』を参照)。
(2020年12月1日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト