遺産相続は退職金に並ぶ人生の二大収入であり、大切な老後資金です。親が築いた大切な資産を守り受け継ぐのも、子どもに課せられた重要な使命なのです。本記事では、相続に詳しい税理士が、相続の基礎知識から具体的なノウハウまで、明快に解説します。※本記事は、WTパートナーズ株式会社代表取締役、WT税理士法人代表社員の板倉京氏の著書『知らないと大損する! 定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)を一部抜粋・再編集したものです。

もめる相続が「一番の損」になる納得のワケ

遺産相続でもめると、相続税も高くなる!

相続から10ヵ月以内に遺産の分け方が決まらないと、税金を安くする特例が使えない!

特例を使えないと、高い税金を払わなければならないことも。

相続でもめないためには、親御さんが元気なうちに「遺言書」を作ってもらう。

 

本連載では、相続税を減らすためのテクニックを紹介しますが、その前に、相続のキホンについて簡単に説明しておきます。相続は「相続ができる人は誰なのか」「遺産の分け方はどう考えるのか」など、様々なルールが決められています。

 

最低限知っておきたいのは、誰がどのくらい相続するのかを考えるベースとなる「法定相続人と法定相続分」です。

 

相続は、法律で決まった法定相続人だけが、財産をもらえます。法定相続人以外の人に財産を残すためには、遺言書などで指定する必要があります。

 

「法定相続分」は、分け方の目安です。実際は、遺言書があれば遺言書の通り、遺言書がなければ法定相続人全員で話し合って、財産の分け方を決めます。

 

[図表]法定相続人と法定相続分

 

相続税についても簡単に説明します。相続税は、すべての人にかかるわけではありません。相続財産の額が、決められた基礎控除額を超えた場合だけ相続税がかかります。相続税の基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。

 

相続の話というと、「節税」の話に興味を持つ方が多いのですが、どんなに頑張って節税対策をしても、遺産の分け方でもめてしまっては元も子もありません。遺産の分け方でもめるということは、家族の仲をこわしてしまうだけではなく、実は相続税も高くなってしまうのです。遺産分けでもめてしまって、遺産分割が相続税の申告期限までに決まらないと、税金を安くする特例が使えなくなってしまうからです。

 

こういう話をすると「うちは、仲がいいから遺産分けでもめたりしないよ」と言う人がいますが、相続は仲が悪くなくても、欲張りな人がいなくても、もめることがあるのです。

 

よくあるのは、介護が絡んだ時の相続です。


東京に住むAさん一家は、地価の高いところに住んでいたので、自宅の土地の価値だけで8000万円。それ以外には、現金など2000万円くらいの財産がありました。母親はすでに他界していて、その後父親が亡くなっています。残された子どもは姉と弟。姉は独身で父親と同居して父親の介護をしていました。姉が勤めていた会社を辞めて、介護に専念すると決めた時、弟は「お父さんの面倒をみてくれるなら、相続の時は姉さんがたくさんもらったらいい」と言ってくれたといいます。でも実際お父さんが亡くなると、財産の分け方でもめてしまったのです。

 

介護でよくあるのは、実際に介護をした人としていない人では介護に対して感じる負担感が違うということ。姉は「会社を辞めてまで大変な介護を1人でしたのだから、すべての財産をもらってもいいくらいだ」と思っていましたが、弟は「介護っていっても、デイサービスを使ったりして、そんなに大変ではなかったはず。法定相続分よりちょっと多いくらいで十分だろう」と考えたのです。

 

結果、申告期限までに話し合いがつかず、770万円の相続税を払うことになってしまいました。実は、もめずに相続できれば相続税は、ゼロで済んだ可能性もあるのです。

 

●遺産の分け方でもめると税金圧縮効果のある特例が使えなくなる!

 

相続税には税金を安くするいくつかの特例があります。よく利用されるのが、「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」。どちらも数百万~数千万円単位での、税金圧縮効果が見込めます。

 

しかし、これらの特例を受けるためには、「申告期限内に遺産分割を終えて、相続税の申告書を提出する」ことが必要です。相続税の申告期限は、相続が起きた日の次の日から10ヵ月以内。実際この10ヵ月というのは、バタバタしているうちにあっという間に過ぎてしまいます。

 

この間に遺産の分け方が決まらなければ、特例が受けられません。その結果、特例が使えれば払う必要のなかった高額な相続税を支払わなければいけないことになりかねないのです。

(ただし、税務署に「申告期限後3年以内の分割見込書」[3年以内には財産分けをします! という届出書]を提出して3年以内に分け方が決まれば、特例を受けた相続税の申告をやり直し、税金を取り戻すことはできます)。

 

●分け方が決まらないと銀行預金も下ろせない

 

財産の分け方が決まらない場合、他にも困ったことが起こります。銀行口座などが動かせなくなるのです。銀行口座は、持ち主が亡くなったことがわかると凍結されて、誰が預金を相続するか、はっきりするまでは口座を動かせなくなるのです。相続法の改正で、相続人であれば預金の一部を仮払いできる制度が創設されましたが、下ろせるのは一つの金融機関あたり最高でも150万円までです。

 

相続人全員の同意書が取れれば、相続する人が決まる前でも預金を下ろすことはできます。ただ、遺産分割でもめているような場合、そういった同意書を取ることさえ難しくなる可能性が高いですよね。そうなると、高額な相続税はかかるわ、払おうにも口座のお金は下ろせないわで、散々な目にあいます。

 

家族と不仲になった上にお金で苦労をするのはとても辛いことです。そうならないためには、遺産分割で生前に家族みんなが納得できるような財産の分け方を相談し、親御さんに「遺言書」を残してもらうようにしてほしいと思います。遺言書の作成方法についての詳細はここでは省きますが、私が代表を務めるWT税理士法人編著のエンディングノート『税理士がアドバイスする‼ 相続手続で困らないエンディングノート』に詳しく書いています。相続税の計算などもできるようになっていますので、ご参考にしてください。

 

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