2013年に中国・習近平国家主席が提唱した「一帯一路構想(BRI)」。沿線諸国・地域の期待を集める一方、プロジェクトをめぐる衝突や債務累積の懸念による否定的評価、はては主要国から政治的野望との警戒の声があがるなど、諸外国のBRIに対する受け止め方、評価は様々だ。今回のパンデミックを受け、中国がBRIをどう展開していくのか、関係各国が注目している。本記事では、BRIの今後の展開について、不確実要因を踏まえつつ、経済・政治の両面から考察する。本稿は筆者が個人的にまとめたものである。

投資需要が増大する、医療・公衆衛生サービス分野

2020年11月25日の掲載記事、『コロナ禍は「一帯一路」構想をどう変えていくのか?』に引き続き、パンデミックがBRIに与える影響について解説していく。

 

 医療分野の需要増と民間部門の役割拡大 

 

中国内外での医療・公衆衛生サービス分野への投資需要が増大している。特に沿線諸国・地域の多くはそもそも医療インフラが整っておらず、パンデミックの影響で中国の医療技術関連企業が進出する機会が増える。中国は感染状況の把握にAI(人工智能)など最新技術を活用しているが、すでにインドやタイなど、これにならってスマートシティ建設を計画する沿線諸国もあり、そこに中国科技公司が投資を始める動きもある。

 

アリババ、ファーウェイ、テンセントなど、情報・通信関連巨大企業はすでにBRIでその存在感を高め、資金ギャップを埋めるなど融資機能も有するようになっており、そうした傾向が強まるとの予測もある。民間部門が最も投資リターンが高いと見なすプロジェクトは国際サプライチェーンに関連していることが多く、具体的には、生産基地を中国からより生産コストの低い国・地域に移転する一方、消費基地としては中国内とBRI沿線諸国・地域の市場をねらうプロジェクトになろう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

BRI沿線諸国への融資、2020~21年に返済期限

 債務返済問題 

 

2015、16年にBRI沿線諸国に供与された融資の多くは元本・利子の返済猶予期間が5〜6年に設定されているため、20、21年に返済期限を迎える。パンデミックで債務国が経済的打撃を受ける中での返済となり、中国当局は新規融資よりこの返済処理に忙殺される恐れがある。中国当局のこれまでの対応から、一部の小規模無利子融資の返済を免除しつつ、基本的には(時に金利の変更など契約条件の変更や再融資を伴った)返済期限を延長する選択肢が取られるとの予想が多い。

 

西側シンクタンクRhodiumの推計によると、これまで再交渉で返済猶予としたものが58%にのぼる(なお交渉中のものを除くと73%、図表1)。中国学者からも「中国は債務問題を当該国の経済発展を通じて解決しようとする立場。単なる債務免除は当該国の長期的な発展にとってむしろマイナス。対アフリカ向け無利子融資の他には、債務免除はあまりないだろう」との見解が出されている(中国商務部国際貿易経済合作(協力)研究院宗微副研究員が中国官製メディア環球時報誌上で5月に主張)。中ア特別サミットでの習発言も、無利子融資の返済免除とその他の返済期限の延長に言及している。

 

(注)債務免除はすべて少額無利子融資。DSSIの下で10ヵ国に対し表明した返済期限延長を含まない。 (出所)Rhodium Group 2020年10月8日付リポート
[図表1]中国のこれまでの債務返済交渉結果 (注)債務免除はすべて少額無利子融資。DSSIの下で10ヵ国に対し表明した返済期限延長を含まない。
(出所)Rhodium Group 2020年10月8日付リポート

 

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