厚生労働省によると、日本の離婚率は35%、離婚件数は20万件を超えるといわれています。しかし、ひと口に離婚といっても状況は違います。特に資産が多い夫婦の場合は、離婚したいと思ってもひと苦労。そこで離婚問題の中でも特に争いとなりやすい「財産分与」について、弁護士であり、プライベートバンカーライセンス(富裕層向けコンサルタント資格)を保有する岩崎総合法律事務所の岩崎隼人弁護士がQ&A形式で解説していきます。

Q. 医師やスポーツ選手になるためにしてきた努力は考慮してもらえますか?

 

資格(医師免許など)や技能(スポーツ選手など)を習得するまでの事情を考慮してもらうよう主張することは可能です。資格を持つ一方の努力や能力を認めた実例を紹介します。

 

会社員である妻が、病院(医療法人)経営者で医師でもある夫に対して、共有財産(約4億円)の半額(2億円)を請求したケース(福岡高裁昭和44年12月24日判決)。

 

裁判所は、2分の1ルールが基準となることは認めつつも、妻の「協力もさることながら、一審被告(夫)の医師ないし病院経営者としての手腕、能力に負うところが大きいものと認められるうえ、一審原告(妻)の別居後に取得された財産もかなりの額にのぼっているのであるから、これらの点を考慮すると財産分与の額の決定につき一審被告の財産の二分の一を基準とすることは妥当性を欠く」として、2億円の請求に対し、2000万円の限度で請求を認めました。

 

主婦である妻が、病院(医療法人)経営者で医師でもある夫に対して、共有財産(約3億円)の半額(1億5000万円)を請求したケース(大阪高裁平成26年3月13日判決)。

 

裁判所は、2分の1ルールが基準となることは認めつつも、以下のような場合には2分の1ルールの修正を検討するべきであると判断しました。

 

1.夫婦の一方が、スポーツ選手などのように、特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが、加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり、通常の労働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合など、高額の収入に将来の生活費を考慮したベースの賃金を前倒しで支払うことによって一定の生涯賃金を保障するような意味合いが含まれるなどの事情がある場合

 

2.高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合

 

こちらのケースでは、「医師の資格を獲得するまでの勉学等について婚姻届出前から個人的な努力をしてきたことや、医師の資格を有し、婚姻後にこれを活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮して」、医師である夫とその妻の寄与割合を6:4と認定し、約1億2000万の限度で妻への分与を認めました。

 

半分ももっていかれるのは、納得がいかない(※画像はイメージです/PIXTA)
半分ももっていかれるのは、納得がいかない(※画像はイメージです/PIXTA)
次ページQ.企業経営者であることの特殊性は考慮してもらえますか?

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録