自分亡き後も、わが子には幸せに暮らしてほしいもの。わが子のうち、定職についていない子や病弱な子がいる場合には、ほかの兄弟姉妹よりも多めに財産をわたしたいと考える人もいるでしょう。遺留分を侵害することなく、非課税制度を活用しながら相続分を調整するには、どうすればよいのでしょうか? ストーリーとともに「被相続人の思いを叶える遺言書」の書き方を解説します。※本連載は、楠部亮太弁護士、中川紗希弁護士、平田久美子税理士ら監修の『失敗しない遺言とお墓のはなし』(税務研究会出版局)より、一部を抜粋・再編集したものです。登場するすべての事例・住所や氏名などはいずれも架空のものであり、実在の人物等とは関係ありません。

「生前贈与」の非課税制度は3つ

<1. 暦年課税>

1年間(1月~12月)で110万円までの贈与ならば贈与税はかからない。

 

<2. 相続時精算課税の選択>

贈与について累計2,500万円まで非課税。ただし、相続税のときに、贈与された財産を相続税の課税価格に持ち戻す。つまり、贈与税は非課税にするが、相続税で精算するという制度。ただ、高橋家は相続税も非課税(基礎控除額4,200万円まで非課税。計算は前回記事を参照)。贈与税、相続税ともに非課税になる。

 

<3. 教育資金の一括贈与>

親や祖父母などが教育資金として生前に贈与すると、

⇒特徴(1)1,500万円までと非課税枠が大きい

⇒特徴(2)受贈者が次の①~③いずれかの場合は、3年以内の持ち戻し不要(平成31年3月31日までの教育資金の一括贈与については相続税の対象となりません)

 

①23歳未満である場合

②学校等に在学している場合

③雇用保険法の教育訓練を受けている場合

 

銀行に口座を作るなど、非課税にするには要件がある。その他、制度の期限や所得要件(受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円以下)などの要件があるので確認が必要。

 

また、結婚・子育て資金や住宅取得の資金に関する非課税制度もあり。

「特別受益の“持ち戻し”」とは?

特別受益:

被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた場合、その受けた利益を指します。高橋家でいえば、良子さんがもらったマンションが該当します。

 

持ち戻し:

公子さんの相続財産は預金だけです。遺産分割のときに、この預金に、マンションを加えることを特別受益の持ち戻しといいます。公子さんの財産は預金が3,000万円。持ち戻しをすると、マンションが加わるので合計4,000万円。優子さん、良子さんに相続させる金額も変わってきます。

 

イラスト:
[図表3]〈持ち戻し〉相続させる金額の違い イラスト:新岡麻美子

 

預金3,000万円のうち2,000万円を優子さんが、良子さんはすでに1,000万円をもらっているので、残り1,000万円を相続。つまり、持ち戻しがあると、優子さんに相続させる金額は増え、良子さんの金額は減ってしまう。

 

【税理士よりひとこと】

相続財産に加算する相続税の計算では、遺言書の内容に関係なく、亡くなる前の3年以内に相続や遺言で財産を取得した人に贈与した財産は相続財産とみなして持ち戻します。ただし、前述の非課税制度「3. 教育資金に関する贈与」で、亡くなった日において受贈者が23歳未満であったり学校等に在学している場合は加算しなくてもよいです。

 

 

楠部 亮太

楠部法律事務所 代表弁護士

 

中川 紗希

abri(アブリ)新宿総合法律事務所 代表、弁護士

 

平田 久美子

平田久美子税理士事務所 代表、税理士

 

 

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失敗しない遺言とお墓のはなし 人生100年時代の安心を!

失敗しない遺言とお墓のはなし 人生100年時代の安心を!

監修:楠部 亮太(弁護士)

監修:中川 紗希(弁護士)

監修:平田 久美子(税理士)

取材協力:畠中 雅子(ファイナンシャルプランナー)

税務研究会出版局

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