由緒正しき家柄ではあるものの、財産のほとんどを失ってしまった一家。「先祖代々の家だけは守り抜かなくては」という切実な思いから、母親が遺言書をしたためます。ところがその結果、思わぬ事態を招くこととなりました。トラブルを引き起こすこととなった遺言書の中身とは? また、母親の願いを叶えるには、どうすればよかったのでしょうか。※本連載は、楠部亮太弁護士、中川紗希弁護士、平田久美子税理士ら監修の『失敗しない遺言とお墓のはなし』(税務研究会出版局)より、一部を抜粋・再編集したものです。登場するすべての事例・住所や氏名などはいずれも架空のものであり、実在の人物等とは関係ありません。

【事例】「先祖代々の家」を守りたい一心で…

福永家は旧家で、スマ(仮名)が福永家に嫁いだのは50年も前。スマは二人の子どもに恵まれ、不自由のない日々が続く。

 

ところが、福永家には怒涛の如く災難が押し寄せる。夫が事業に失敗し、心労で倒れ帰らぬ人となってしまった。スマは家財道具や着物、お金になるものは手あたり次第に処分して二人の子どもを育てた。

 

ただ、どうしても売りたくないものがあった。それは家である。幸せだった思い出や夫の無念、引き継ぐ妻の責任。家だけは守らなければならない。後継ぎの長男も理解している。だが、それから5年。スマが亡くなってからほどなく、福永家の敷地にブルドーザーが入り、家は取り壊されてしまった。結局、守り抜けなかったのである。

 

(※福永家の相関図は図表1参照)

 

イラスト:新岡麻美子
[図表1]福永家相関図 ※氏名等はすべて架空のものです。
イラスト:新岡麻美子

 

スマさんは生前、図表2のような遺言書をしたためました。長男の茂也さんに全財産を相続させ、家を守ろうとしたのです。

 

残念なポイントは【財産すべて】 【長男茂也】の2つ。解説は以降詳述 ※住所・氏名等は架空。
[図表2]残念な遺言書 残念なポイントは【財産すべて】 【長男茂也】の2つ。
※住所・氏名等はすべて架空のものです。

 

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監修:楠部 亮太(弁護士)

監修:中川 紗希(弁護士)

監修:平田 久美子(税理士)

取材協力:畠中 雅子(ファイナンシャルプランナー)

税務研究会出版局

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