いつの時代も「芸能人の不倫」は世間を騒がせるものです。「不倫は許せるものではない」という考えを持つ人は少なくありませんが、不倫の被害者であるはずの「配偶者の謝罪」や、社会的制裁などは本当に必要なものなのでしょうか。世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が解説します。

有名人の不倫…「妻の謝罪」は必要なもの?

Q.不倫のニュースが相も変わらず、世の中に溢れています。有名人が不貞に至ったとき、本来、被害者でもあるはずのパートナーが謝罪コメントを出していて、違和感を覚えてしまいます。あと、最近の世の中の風潮として、社会的制裁を加えるまで事態が収まらない傾向があると思います。この辺りについて、先生はどのようにお考えですか?

 

パートナーが謝罪する風潮に違和感を覚える…(画像はイメージです/PIXTA)
パートナーが謝罪する風潮に違和感を覚える…(画像はイメージです/PIXTA)

 

A.社会的影響力の強い有名人の場合、スポンサーへの配慮などから「うちの夫(妻)がお騒がせして申し訳ありませんでした」のようなパートナーからの謝罪に至ってしまっているのでしょうけれど、こういったことが必要なのかどうか。法的な観点からお話しさせていただきます。

そもそも、夫婦はなんでも「連帯責任」なのか?

確かに民法では、婚姻中に形成した財産を「共有財産」と見ますし、日常的な家事債務を夫婦の連帯責任だとしています(民法761条、762条)。ひょっとしたら、この様な考え方が「夫婦は一心同体」「何でもお互い責任をとらなければいけない」という風潮を育てているのかもしれません。

 

しかしながら、そのことと、夫婦の一方が働いた不倫を社会に対してもう一方が謝罪する必要があるかどうかは別。当然ながら、夫婦の一方の不倫を他方が社会に対して謝る法的な必要性もなければ、道義的な責任もありません。

 

とはいえ、実際に不倫のご相談を受けていると、不倫をした相手に「社会的な制裁を加えたい」というご要望があるのも事実です。「奥さん(旦那さん)に知らせてやりたい」「親に知らせたい」「職場に知らせたい」などです。

 

しかしながら、上に述べた通り、不倫について妻が連帯して責任を取る必要があるわけでもありませんし、同じように不倫について親に責任があるわけではありません。また、職場に知らせるなどすれば別途プライバシー侵害の問題を生じるので、ご注意ください。

 

※東京地裁平成20年6月25日判決(2008WLJPCA06258002)は、不倫された配偶者が職場に不貞の事実を触れ回ったことについてもプライバシー侵害の不法行為の成立を認めています。

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本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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