海外の大学入学への最短ルート「国際バカロレア」とは
文部科学省が力を入れている国際的な教育の中に、「国際バカロレアの普及・拡大」があります。国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)とは国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムです。
文部科学省IB教育推進コンソーシアムによれば、「世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置されました」。
発端は、世界中を転勤する家庭の子どもたちの学びや進学のために考えられたことです。IBの教育プログラムを採用しているIBの認定校で必要な教育を受ければ、世界中の大学に進学できる、というものです。また、教育のありかた自体も、世界中どこででも生きていけるような力をつけるプログラムになっています。まさに、「国際的な人間」を育てるための教育です。
平成30年4月1日現在、世界140以上の国・地域、5119校において実施されています。日本ではインターナショナルスクールで採用されているところが目立ち、日本の高校卒業資格がとれる一条校では、まだ認定校はわずかです。また、16〜19歳ではIBCP(国際バカロレアキャリア関連プログラム)を日本人で受けるとなると非常に大変です。多くはディプロマのプログラムを採用しています。
ディプロマの授業は、日本の一条校の高校では「原則として英語、フランス語又はスペイン語で実施」とあるものの、日本の一条校の高校では、日本語で受けられるところもあります。一般の科目で勉強する部門とIBの部門が、同じ学校の中にある、という学校も多いです。
ただ、実際にIBのプログラムで勉強した生徒の話では、「日本の普通の学校よりもはるかに授業準備に時間がかかり、授業後の復習も大変」とのこと。また、授業内容も、文部科学省が新学習指導要領に掲げる「主体的・対話的な深い学び」を実現するものですが、手法としては、後述するアメリカの教育に近い形です。
日本の学習は、教師が教壇から説明する形が多く、受け身で聴いているだけで許されるともいえますが、自分で課題を立てて論述し、それを討論で批判されるなど、これまで日本人がなかなか体験できなかったスタイルの授業を受けるので、子どもたちは戸惑うだけでなく、「心が折れる」とまで言うことがあります。
特に、日本で生まれ育ち、海外での教育経験のない子どもは、衝撃を受けるかもしれません。しかし、子どもは柔軟です。「覚える学習より深く考える学習だ」「いろんなクラスメイトの意見が聞けて面白い!」とハマれば、それこそ世界にはばたく土壌ができた、といえるでしょう。
「国際バカロレアの資格を得られれば、世界の大学に入学できる」となれば、保護者も子どもたちも興味深いでしょう。日本の受験戦争は非常に過酷で、高校3年生の1年間は受験勉強に費やされるといっても過言ではありません。また「将来、海外の大学に入学したい」となると、日本の一般的な高校からそのまま入学するのは非常に大変で、高校を卒業してから語学学校に通う、それでも大学の勉強やライフスタイルについていけない、ということが起こりがちです。
しかし、IBの認定校なら、高校自体が海外の学校のスタイルと似ていますし、外国語の授業も多いので、外国語力や海外の大学での勉強の仕方への対応力は非常に高くなった状態で大学に入学できます。海外の大学に行く、と決めているなら、IBの認定校に入学するのはかなり有効といえます。ただ、この資格を取得するのにも試験があり、そのスコア次第で、行ける大学が決まるという側面もあります。
高校在学中はとにかく学習に時間を費やし、試験のためにがんばる……、もしかしたら日本の大学を受験するより厳しいかもしれません。さらに「やはり日本の大学に入学しよう」となったときには、科目のとりかたも学習スタイルも違うので、日本の受験システムになじむのが難しいという話はよく聞きます。
AO推薦や自己推薦をねらうのが有利と言われますが、3年間、IBで学ぶと、逆に日本の大学のスタイルに物足りなさを感じるかもしれません。このようなことを視野に入れて、IB認定校についてはよく考えてみましょう。
柳沢 幸雄
東京大学名誉教授
北鎌倉女子学園学園長
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