いくら最新設備を導入しても防犯は「いたちごっこ」!?
住戸内の設備同様、気になるのがセキュリティです。住まい選びの際に防犯を気にする人が増えています。水と安全はただと言われていた時代からすると、日本も物騒な社会になったようで、その結果、住宅の防犯性能は日々進化していると言っても過言ではないほどです。
ほんの数年前なら、エントランスにオートロックがあれば安心と思われていましたが、最近ではキーがなければエレベータを呼べない、自分の住んでいる階以外には降りられないといったマンションや、指紋や静脈などを使った生体認証のオートロックなど、まるで昔見たSF映画のようなシステムも登場しています。
しかし、他の設備同様、防犯についても最新式の設備があれば安心というわけではありません。設備が新しくなれば、犯罪を行おうとする人はそれを破る手を考えるため、結局はいたちごっこになっています。
たとえば玄関ドアを見てみましょう。2000年代前半にはピッキングという、細い道具を鍵穴に入れて鍵を開けて押し入る空き巣が急増し、その結果、今ではディンプルキーが普及し始めています。
しかし、2003年にピッキング防止法が制定施行されると、今度はサムターン回しという技術が開発され、それもダメになると次は強引にドアをバールで開ける作戦に・・・。
最近では音も立てずにガラスを割る手口も増えており、いくら最新設備があったとしても、侵入しようとする輩はなんとしても強行に侵入するのです。
これは防犯カメラや開閉センサーなどといった設備でも同様です。新築のマンションであれば、入居者以外の人がパンフレットを持っている可能性も否定できません。その場合には、どの場所に、どんな性能の防犯カメラが何カ所設置されているかも知られているため、どんな設備が設置されていようが、強行軍の侵入は防げません。
また、1階でなければ安心ということでもありません。一戸建てや3階以下の建物の場合に1階での空き巣発生頻度が高いのは事実ですが、4階以上の建物になると危険は各階に分散し、最上階でも絶対安全とは言えなくなります。
超高層マンションですら、最上階への侵入があるのですから、階数が防犯に役立つとは言い切れないのです。
その意味では最新設備があったら安心と思うのは、最新設備を付けておけば高値であっても売れるという売る側の論理に乗ってしまうようなものだと筆者は思います。ここ数年、設備競争が続いているのは、そうした思い込みで家を買う人が多い裏返しでもあるのです。
犯罪防止には設備よりも「人の目」
実際には、最新防犯設備以上に安全を確保してくれるのは人間関係です。犯罪を防ぐのは人の目なのです。
かつて警視庁で空き巣犯に聞き取り調査をしたところ、6割以上の犯罪者たちが侵入を諦めた原因として、侵入先を物色中に不審に思った近所の人に声をかけられたり、じろじろ見られたりした経験を挙げたと言います。空き巣の犯意をくじくためには、誰かが見ているということが有効なのです。
これをマンションで考えた場合、大事なのはコミュニティです。マンション内で互いが互いを知り、挨拶ができる関係性があったとしたら、挨拶を返さない人は当然のことながら怪しまれ、知らない人がいたらおかしいと気付くはずです。
こういうマンションであれば、不審者はそもそも敷地内に入りにくいと感じるはずですし、住戸への侵入など思いもしないことでしょう。
つまり、防犯を重視して住まいを選ぶのであれば、設備よりもコミュニティを育むための仕掛けはどのようなものが用意されているのかについて確認することの方が重要なのです。