コロナ禍においては、学校の授業も従来の方法から変更を余儀なくされ、オンラインを導入するところが増えています。しかし、その学習効果を不安視する保護者は少なくありません。ハーバード大学、東京大学、開成高校のそれぞれで教鞭をとったベテラン教育者で、東京大学名誉教授・北鎌倉女子学園学園長の柳沢幸雄氏が、子どもたちの現状を伝えるとともに、不安を抱える親へアドバイスします。※本連載は、『「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHPエディターズ・グループ)より一部を抜粋・再編集したものです。

英語は「結論ファースト」!堂々と意見表明すべし

我々は、一生懸命に英語を勉強して、和訳や英訳をしようとします。けれど、あと20年後にはそんな苦労は不要になるかもしれません。あるいは、通訳や翻訳といった職業もなくなってしまうかもしれない。

 

今、あらゆる種類の、性能のいい翻訳機が出てきています。スマホのような形をしているものの集音マイクに向かって日本語で話せば、瞬時に別の言語で翻訳される。あるいは、メガネの形をしていて、かけて読んだ文章が、瞬時に別の言語になるなど。スマートフォンのアプリとしても、翻訳や通訳の機能がすでにあります。

 

翻訳の文章がぎこちないとか、感情の部分がうまく翻訳されないなど、今の段階では翻訳家や通訳の人のほうの技術が上ですが、やがて精密になり、人の知識や技術を超えてくると予想されます。

 

そうなると、語学のために使う時間が、その人にとってどれだけ生産的な時間になるのか。想像もつかない世界がやってくる気がします。

 

お子さんにも、「翻訳機があれば、英語の勉強なんていらないんじゃないの?」と言われたことはありませんか?

 

ただ、言語が「自己を表現する手段」なのだとしたら、他国の言語に直すのは機械に任せられても、表現することそのものは、機械がその表現を情報として受け取れるような、はっきりしたものでなくてはいけません。

 

私が英会話学校で英語を勉強したときに、目からうろこだったのは、自分の考えを英語で表現したときに、“Conclusion first!”と言われたことです。つまり、「回りくどいことは言わず、結論を言いなさい」ということ。

 

日本語は途中経過を一つひとつ埋めていって、ようやくゴールとしての結論に行き着く。けれど、アメリカ人は、まず、「私はこう思う」と結論を言うのです。

 

これは、文法も関係しています。日本語は主語のあと、あれこれの途中経過があって最後に述語ですが、英語の場合は、主語の次に結論としての述語がきます。この文法の違いが、考え方の違いにも影響しています。

 

日本人は「気配り」「根回し」を重要視し、場の空気を読んで、みんなが納得するような、言ってみればあいまいな答えを探します。これは日本語が、主語がなくても成立することにも関係しています。つまり、物事を決定する際、個人が主義主張せずにみんなで同意するという文化です。

 

しかし、英語圏では、みんなが納得する共通の答えを探すなどということはしません。また、日本人は話しながら考えて結論を出すようなところがありますが、それではダメで、話す前に結論がわかっていて、その結論に対しての理由づけをつけ足すように話していく。その考え方の転換をしないと、「英語圏の人とのコミュニケーション」が、うまくいかないのです。

 

このことは、英語を上手に話すことの根本です。英語をうまくしゃべりたければ、自分の考えを、堂々と述べること。相手が自分の考えと違っているかどうかなんて、気にせず話し出すことです。

 

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柳沢 幸雄

東京大学名誉教授

北鎌倉女子学園学園長

 

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「頭のいい子」の親がしている60のこと

「頭のいい子」の親がしている60のこと

柳沢 幸雄

PHPエディターズ・グループ

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