人間の心や頭の発達にとって、子ども時代は重要な意味を持ちます。近年、傷つきやすい若者、すぐキレる若者、頑張れない若者が散見されるのは、学力や知力とは関係ない、何か他の能力の不足が関係している――と、心理学博士の榎本博明氏は語ります。ここでは、その能力とは何か、どうしたら高められるのかを紹介します。本連載は、榎本博明著『伸びる子どもは〇〇がすごい』(日本経済新聞出版)から一部を抜粋・編集したものです。

塾通いが一般化する一方、学習意欲の欠如に指摘も

小学校に上がってから躓かないためにはスタートが肝心だとか、小学校に入ってからやることを先取りしてやっておけば自信がもてて後がスムーズに行くなどと言われたりする。それにも一理ある。

 

教室に座っていても、先生の言うことや板書内容がまったく理解できず、友だちが発言する内容も理解できないというのでは、学校生活への適応は難しい。だが、学校の授業は子どもの発達に合わせてプログラムされているので、いきなりそのような事態に陥ることは、まずあり得ない。

 

はじめての場や慣れない場では過度に緊張する子、できないことがあるとすぐに自信をなくしてしまう子、しっかり準備ができていないと落ち着かずパニックになってしまう子などの場合は、親が適応のための手助けをすることも必要だろう。

 

たとえば、少しずつ先取りして予習をさせるのもよいかもしれない。一度読んだり説明を受けたりしたことなら、教室での先生の説明は比較的スムーズに頭に入ってくるだろうし、予習してあるということによって未知な状況に対する過度の緊張からも解放されるだろう。

 

だが、自分の力の及ばないこと、準備が間に合わなくて十分力を発揮することができないこと、自分の思い通りにいかないこと、そんなことは生きていれば何度も経験するものである。どんな子どもも、成長の途上で、そうした苦い経験を積み重ねていくことになる。それでも前向きに生きていかねばならない。

 

そこで大事なのは、そうした挫折状況を何とか耐え抜く精神力、多少苦手なことでもできる限り頑張ってみる意欲、できないことをくよくよ気にするより気分転換してできることに全力を傾けられる楽観性、好きなことや興味のあることに我を忘れて没頭する集中力などを身につけておくことである。

 

すなわち、自分の生きる道を力強く切り開いていける自発性や忍耐力こそが、ほんとうになくてはならない能力であり、幼いうちから培っておきたい能力なのである。

 

自分から知りたい、わかりたい、できるようになりたいと思うより前から、わけもわからずに知識を与えられ、スキルを教えられ、覚えさせられる。そのような形の早期教育は、学ぶ意欲の向上に結びつくとは考えられない。大切なのは、知りたい、わかりたい、できるようになりたいと思う心、そう思ったときに自ら積極的に調べたり学んだりする意欲である。

 

子どもたちの学習塾通いが一般化することによって勉強への意欲が高まっているかと言えば、まったくそんなことはない。むしろ逆である。生徒や学生の学習意欲の欠如が指摘され、学業成績の低下も指摘されている。

 

こうしてみると、早いうちから勉強をさせることのメリットはあまりないと言ってよいだろう。

 

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榎本 博明

MP人間科学研究所 代表

 

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