日本の獣医師は高齢になれば8割が廃業する一方で、若手は大多数が困難な新規開業にチャレンジしています。第三者事業承継は、新規開業よりもリスクが低く、引退する獣医師・若い獣医師にとっても、顧客にとってもプラスとなります。本連載は、動物病院事業承継コンサルタントの西川芳彦氏の著書『なぜ8割の動物病院が廃業になるのか』(河出書房)の中から一部を抜粋し、動物病院の第三者事業承継のメリットをご紹介します。

若い獣医師も事業承継による開業ならリスクは低い

今の日本の獣医業界は、大多数の獣医師が引退して廃業し、大多数の獣医師が新規開業するという状況がずっと続いてきました。ところが、この5年以内に日本の獣医業界は間違いなく、プラス成長から長期マイナス成長に移ります。このまま、引退する院長の8割の病院が廃業し、大多数の獣医師が新規開業するという状況が続けばどうなるでしょうか。おそらく、病院を継続できなくなる若い獣医師がかなり増えると思います。

 

私はこれまで、全国で300件以上の開業支援を行い、80件程度の事業承継支援を行ってきてつくづく思うことは、新規開業した場合のリスクは毎年高くなる傾向があるのに、事業承継による開業は、それに比べてリスクがかなり低いということです。

旧院長と新院長候補の関係がうまくいけば承継もOK

第三者事業承継は、「お見合い結婚と似ている」と言う事ができます。その1番の理由は、初めての出会いが「ご縁」と感じられるかどうかにあるからです。

 

会社同士の買収のM&Aは利益追求の一点のみで一緒になるか否かを決めますが、動物病院の譲渡では、院長先生と引き継ぎたい先生との人間関係の方がむしろ大事で、「初めての出会いで意気投合すると承継は必ずうまくいく」ことがこれまでの事例から明らかです。このベストマッチングをコーディネートするのが、筆者の役目です。

 

この良縁を多くの院長先生や勤務医の先生につくっていただきたいと思い、ここでは、ほとんどの先生が知らない、事業承継の10のポイントについて、数回に分けて整理していきます。この10項目は、言い換えれば、この第三者事業承継の特徴でもあります。

勤務医の先生に伝えたい「7つのポイント」

1.承継は「若いからまだ自分には関係がない」というわけではない


承継開業した先生方に共通していることは、「この第三者事業承継とご縁してよかった。そこから人生の新たな選択肢が生まれました」と仰っている点です。

 

「預貯金が少ないから新規開業は無理である」とか、「犬の数がこれから減って行くので新規開業はリスクが大きい」として、このまま勤務医を続けるしかないと思われていた先生が、この第三者事業承継を知って、今ある病院を承継することで「院長」としてスタートされています。まさにこの事業承継開業という方法に出会えたことで、自分の夢が現実化できたと言えるでしょう。

 

この第三者事業承継との出会いは、筆者の会社から送られてきた「小冊子」であるとか、セミナーに参加したとか、ネットで「承継」を検索して行き着いたとか、個人によって様々です。時期も、早い人は学生時代からの人もいますが、独立しようと考える30代前半の人が多いのが特徴です。

 

第三者事業承継は、新規開業とは全く異なる開業スタイルですから、「こういう方法もあるのだ」と知っていれば、その分、人生のチャンスをつくることになります。

 

勤務医の先生を続けるか、大きなリスクを覚悟で新規開業に踏み切るかの二者択一の選択肢しかない人と比べれば、3つ目の選択肢があることは、その分、開業にむけてのアドバンテージを持つことにもなります。

 

2つ目以降のポイントについて、次回に続きます。

なぜ8割の動物病院が 廃業になるのか

なぜ8割の動物病院が 廃業になるのか

西川 芳彦

河出書房

ペットを飼っている人ならしばしばお世話になる動物病院。しかし、この動物病院の8割が、院長の引退と共に廃業していることをご存知だろうか。 今の日本の獣医業界は、大多数の獣医師が引退して廃業し、大多数の獣医師が新…

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