「適時教育」を可能にするモンテッソーリの「敏感期」
モンテッソーリ教育で「子育ての予習」をしていく上で、最重要のキーワードが「敏感期」というものです。敏感期とは、子どもが何かに強く興味を持ち、集中して同じことを繰り返す、ある限定された時期のことを指します。
敏感期にはたくさんの種類があります(『【画像を見る】モンテッソーリ教育における子どもの敏感期』を参照)。0~6歳までの6年間に9種類の敏感期が現れては消えていきます。これらの敏感期の中で、3~6歳の間に、特に重要になってくるのが次の5種類です。
①運動の敏感期
②感覚の敏感期
③言語の敏感期(書く、読む)
④数の敏感期
⑤文化と礼儀の敏感期
この5種類の敏感期が順番にやってくるのではなく、波状的に重なって、関わり合いながら到来するのが3歳から6歳の特徴なのです。より複雑になり、それぞれの子どもによって、こだわるジャンルや深さが大きく違ってきます。
しかし、親がそれぞれの敏感期の特徴を予習して、正しい視点で観察できるようになれば、「わが子の今」が見えてきます。
「謎の行動」「イタズラ」に隠された成長のヒント
先日もある子のママからこんな質問がありました。
「3歳の息子が、1時間も部屋にこもって出てこないので、そっと覗いてみたら、100体くらいある戦隊ヒーローの人形を背の高い順にきれいに並べて、ニタニタ笑っていたんです! うちの子大丈夫でしょうか?」
私は「息子さんはメチャメチャ順調ですよ!」と答えました。
彼は今、運動の敏感期にあり、手指を自由に動かし、繊細にものを使えるようになることに集中しています。倒れやすい戦隊ヒーローを慎重に並べることができるようになったことが嬉しくてたまらないのです。
それに加えて、感覚の敏感期がきているので、高さにとても敏感になっているのです。慎重に高さを比べて、高さの順でダンダンに並べ、うまく、順番に並べられたことにニタニタしていたわけです。
お母様には「知性の芽生えですね! 素晴らしい集中力ですよ! 手先の器用さは一生の宝になりますので、そっと見守ってあげてくださいね!」とお伝えしたら、上機嫌で帰って行かれました。
このように、一見、謎の行動であったり、イタズラにしか見えない行動にこそ、成長のヒントが隠れているのです。
子どもの成長に対する正しい知識をもってしっかり見守ることができる親と、「イタズラばかりして! 気持ち悪い! 片づけますよ!」と、中断させてしまう親とでは、子どもの成長が180度変わってきてしまうのです。
その差はただ一つです。親が「知っているか、知らないか」にかかっているのです。これこそ私が提唱する「子育ての予習」の重要性なのです。そして、子育ての予習の教科書としてピッタリなのが、モンテッソーリ教育なのです。
さらに大切なことは、「~期、というものには、必ず始まりがあって終わりがある」ということなのです。
敏感期も「期」ですので、始まりがあって終わりがあります。6歳を過ぎると敏感期の強いこだわりは、ほとんど消えてしまうのです。
モンテッソーリはこう言っています。
「親や教師が、子どもの敏感期を見落とすことは、終バスに乗り遅れるようなものだ」
要は敏感期は二度とやってこないということなのです。ちょっと残酷な言い方ですが、事実なのです。だから「予習」が必要なのです。通り過ぎてから、「あ~、あの時が敏感期だったのね、ああしておけば良かったのか」と復習をしたり、反省してもあとの祭りなのです。
「いくら敏感期の存在を予習しても、モンテッソーリ園に通わなかったら、終バスに乗り遅れちゃうじゃないですか」
ご安心ください。ご両親が本連載で子育ての予習をして、子どもを見る目を磨けば、敏感期を見逃す心配はありません。家庭でできることはたくさんあります。
それが本連載でお伝えする「ホームメイド・モンテッソーリ」の目的なのです。
わが子の敏感期は二度とやって来ません。だからこそ、どんなに短時間でも、一部分だけでも、毎日でなくても、やらないよりはやったほうが良いことだけは絶対に確かなのです。
次回からは、家庭で実践できるモンテッソーリ教育の事例を詳述します。
<ポイント>
●3~6歳は様々な敏感期が重なってやってくる
●敏感期には始まりがあり、終わりがある
●どんなに短時間でも、一部分だけでも、毎日でなくても、やらないよりはやったほうが良いことだけは絶対に確かである
藤崎 達宏
サロン・ド・バンビーノ 代表
日本モンテッソーリ教育研究所認定教師(0~3歳)
国際モンテッソーリ教育協会認定教師(3~6歳)
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