成長を加速させるASEAN経済共同体の発足
昨年の大晦日、2015年12月31日東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国が、域内の貿易自由化や市場の統合などを通じて相互に経済成長を加速させようとASEAN経済共同体(AEC)を発足させました。
東西冷戦下の1967年に発足したASEANですが、その当時は反共連合の側面がありました。しかし、半世紀を経て、そのような思想的な側面は消えて、社会主義国も含めた市場経済の発展を促進する組織に変わりました。ASEAN経済にも大きな節目を迎えたと言えるでしょう。
ASEANでは近い将来、貿易、関税撤廃など経済を急激な変化の可能性がある政策が施行されます。特に大きな影響があると思われるのは、加盟国内の関税撤廃が2018年に予定されている事です。ベトナムでは自動車の価格が大幅に下がる見通しです。
産業界の一部には、ベトナムの自動車産業が撤退を余儀なくされるのではとの悲観論もあります。しかし、自動車販売の面では価格の大幅な引き下げによる販売の拡大は間違いありません。自動車の普及がその他の消費にも影響を与えることになるでしょう。
経済成長が続くベトナムでは、国民の所得の増加だけでなく、関税の撤廃を要因とした価格の低下が、国内消費に拍車をかけていくでしょう。日本の高度成長期に似たような動きになる可能性が高いといえるのではないでしょうか。
従来型の不動産購入から新しい形の不動産購入へ
2018年関税撤廃が、ベトナムの自動車の普及に拍車をかけるとしたら、様々な変化も顕在化するでしょう。第一に道路などのインフラの整備の変化です。その点では、日本のODA(政府開発援助)で行われているホーチミン市の都市鉄道一号線の建設が急ピッチで進んでいるなど、ホーチミンではインフラ整備が急ピッチで進んでいます。その事もあり、都市鉄道沿線に位置する不動産物件の人気は益々高まっています。
第二には、ベトナム人の住居に関する意識の変化があらわれるでしょう。ベトナムの都市部の一般住宅は、間口4mに奥行きが15~20m程度の「鰻の寝床」のような敷地に建てるのが一般的です。隣の建物との間隔はほとんどありません。その敷地にレンガ造りで3~5階建ての建物を作り、家族、親族が一同で住むことになります。その建物内には、現在唯一とも言っていい移動手段になるバイクを建物内に駐輪しています。現在の一般的な住居では、車の駐車スペースを確保することはできません。
ところが車が安くなり購入できるようになると、ベトナム人の居住に関する考えも変わっていくでしょう。バイクに変わり車が移動手段になると、駐車場を確保できるコンドミニアム、あるいは庭のあるビラがベトナム人の居住用物件として増えていくだろうと思います。2018年はそんな変化のきっかけとなる年になるのではないでしょうか。
外国人の購入で活況のベトナム不動産ですが、予想されるモータリゼーションが2018年に到来することになると、ベトナム人の住に関する意識も革命的に変わるのではないかと思います。