東南アジア最後の“鎖国状態”とも言われていたベトナムは、近年の急激な規制緩和を受け、外国資本の流入とともに、各国からの駐在員数も増加し続けています。今回は、駐在員の需要を通して、特に価値が高まりつつある地域について見ていきます。

日中韓のビジネスマンが集結するアジア有数の国際都市

5月24日、アメリカのオバマ大統領はベトナムで最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長と会談する予定です。米国の大統領がベトナムを訪問するのは極めて異例です。

 

 

ベトナムは東南アジア最後の“鎖国状態”とも言われ、外国資本の進出を敬遠してきましたが、ここ数年世界との距離を縮めているのです。ベトナムは建国以来ともいわれる急激な規制緩和に舵を切り、外資企業の進出が顕著になってきています。TPPへの加盟はその象徴とも言えるでしょう。

 

外国資本の進出における規制緩和の恩恵を受けているのはアメリカに限った話ではありません。日本をはじめ各国の駐在員数は急激に増加しています。

 

外務省領事局の調査によりますと、日本人駐在員数は約9300人(平成23年)で、1人当たりGDPが3000米ドルに満たないいわゆる「後発国」の中で、この数は突出して多いのです。実際、隣国のカンボジアで1200人、同じくASEAN加盟国のミャンマーやラオスではそれぞれ約900人しかいないのです。

 

ホーチンミン都心の繁華街であるレタントン通りには、無数の和食レストランや日本風の居酒屋が立ち並び、平日の夜になると南国には似つかわしくない背広にネクタイ姿といういでたちの日本人駐在員や出張者で賑わいます。日本人駐在員ばかりではなく、韓国人駐在員や中国人駐在員はさらに多くて、まさにアジアが誇る“国際都市”の様相を呈しています。

 

昨年はベトナム戦争終結から40周年、かつての敵国アメリカも今やもっとも重要な友好国のひとつとなりました。2013年にスターバックスが、14年にはマクドナルドがそれぞれ同国1号店を出店させたというニュースはその象徴と言えます。

富裕層居住区・タオディエンの不動産は常に完売状態

ベトナム不動産への投資を考えるとき、駐在員の需要がどこに地域にあるのかを読み解くことは非常に重要です。前述のとおり、駐在員は年々増加傾向にあるものの、住宅の供給が追いついていないと言えます。

 

経済の中心であるホーチミンでは、CBD(中心ビジネス地区)である1区に対して、駐在員が最も多く生活するのは2区及び7区です。7区は日本や韓国、台湾からの駐在員が多いとされ、日本人学校や韓国人学校、台湾人学校もあります。大手のフーミンフンやノバランド、アンギア等が積極的に開発しているエリアで、日本の野村不動産や大和ハウス工業などもこの地域で広大な土地を取得し、開発に着手しています。

 

日本人への賃貸を考えてベトナム不動産投資をする人にとっては、7区というのはポテンシャルの高いエリアでしょう。

 

一方の2区は、7区とは対照的に、欧米系の駐在員やベトナムの超富裕層が集中的に暮らしています。その2区の中でもタオディエン(Thao Dien)と呼ばれるサイゴン川に囲まれたエリアに欧米系駐在員やベトナムの高級官僚や弁護士、実業家、医者などが暮らしています。日本で言えば、東京の広尾のような地区です。まさにベトナムのお金持ちが集まる街なのです。

 

アメリカ人学校、オーストラリア人学校、ドイツ人学校は駐在員の子供が学ぶためのものですが、ベトナム人富裕層が子息たちをこうした外国人学校に入学させるのがトレンドになっています。結果的に不動産需要が高まっているわけですが、タオディエンは戸建が多いエリアでコンドミニアムの数は極めて少ないという問題があります。

 

 

物件が販売されれば短期間で完売してしまうというのが常で、外国人投資家が購入するチャンスがなかなかないのが現状と言えます。逆に言うと、購入することが出来る物件がタオディエンに出てきた場合は、投資のチャンスと捉えるべきかもしれません。

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