脳が疲れ情報を処理しきれなかったとき、ながら行動のとき、気持ちが焦ったときなどに、思いもよらないミスをしてしまうことがあります。ヒューマンエラーを防止するには、活動の流れを追って「要因」を見つけ出すことが重要なのです。※本記事は化学系会社にて5年間ISO規格の品質及び環境マネジメント事務局を担当していた尾﨑裕氏の書籍『ヒューマンエラー防止対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

不正を発生させる「3つの要素」

図1は米国の犯罪学者であるD.R.クレイシーが実際の犯罪者を調査して導き出した“不正のトライアングル”のモデルです。この“不正のトライアングル理論”では、不正行為は、①動機、②機会、③正当化という“不正リスクの3要素”が、全てそろった時に発生すると考えられています。これら3つの要素の1つでもなくすことができれば、リスクテイキングは起こらないという理論です。

 

[図表]不正のトライアングル

 

それでは、トライアングルを構成する3つの要素がどのようなものなのか、順番に見ていきましょう。

 

①動機

“動機”とは、不正行為の実行を欲する状況・事情つまり理由のことです。企業でよく発生する不正行為では、“締め切りの期限が迫っており、期限に合わせるために不正を行った”、“要求された予算内で仕事を終えるために、規格で定められた品質の部品を、コストの安い部品で代用した”などの例があります。

このように企業からかけられたプレッシャーに耐えられなくなった例はよく聞く話です。

 

②機会

“機会”とは、不正行為を実行できる環境のことです。例えば、データ改ざんの例では、1人だけでデータを取り扱っていて“他の者に見つからないという状況”のことです。他には「当人がその行為を行っても、罪に問われないだろう」と考える場合も該当します。

 

また、複数名の職場であっても、“その不正行為に関して誰も異議を唱えることができない”、もしくは“不正行為自体を誰もが疑問に思わない環境ができてしまっている”ような状況も含まれます。つまり自分が行った行動に対して、“自分が見つかる”、“自分が罰せられる”、“不正そのものが見つかる”などの、当人にとってのマイナスのリスクが限りなく低い場合を言います。

 

③正当化

“正当化”とは、不正行為の実行を自身で容認することです。自分勝手な理屈をつけて、自分の心の中で不正行為を肯定してしまう。

 

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