不正を発生させる「3つの要素」
図1は米国の犯罪学者であるD.R.クレイシーが実際の犯罪者を調査して導き出した“不正のトライアングル”のモデルです。この“不正のトライアングル理論”では、不正行為は、①動機、②機会、③正当化という“不正リスクの3要素”が、全てそろった時に発生すると考えられています。これら3つの要素の1つでもなくすことができれば、リスクテイキングは起こらないという理論です。
それでは、トライアングルを構成する3つの要素がどのようなものなのか、順番に見ていきましょう。
①動機
“動機”とは、不正行為の実行を欲する状況・事情つまり理由のことです。企業でよく発生する不正行為では、“締め切りの期限が迫っており、期限に合わせるために不正を行った”、“要求された予算内で仕事を終えるために、規格で定められた品質の部品を、コストの安い部品で代用した”などの例があります。
このように企業からかけられたプレッシャーに耐えられなくなった例はよく聞く話です。
②機会
“機会”とは、不正行為を実行できる環境のことです。例えば、データ改ざんの例では、1人だけでデータを取り扱っていて“他の者に見つからないという状況”のことです。他には「当人がその行為を行っても、罪に問われないだろう」と考える場合も該当します。
また、複数名の職場であっても、“その不正行為に関して誰も異議を唱えることができない”、もしくは“不正行為自体を誰もが疑問に思わない環境ができてしまっている”ような状況も含まれます。つまり自分が行った行動に対して、“自分が見つかる”、“自分が罰せられる”、“不正そのものが見つかる”などの、当人にとってのマイナスのリスクが限りなく低い場合を言います。
③正当化
“正当化”とは、不正行為の実行を自身で容認することです。自分勝手な理屈をつけて、自分の心の中で不正行為を肯定してしまう。