「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

松山のクマネズミを捕まえよう その1

次なる捕獲例:クマネズミの場合~グループホームでの出来事(集団脱走)

 

松山市内の民家を改造してグループホームとして使用しているところから、ネズミで困っているので駆除してほしいとの連絡があり、2010年2月17日捕獲具を6台用意して調査に行った。天井を走り回っているので何とかしてほしいとのことだが、部屋に糞が落ちていないので、餌目的ではなく寒くなる時期に寝床として利用する目的で侵入しているようだった。3台を2段に積み上げて6台を天井裏に設置した(写真2)。

 

写真2

 

この項を進めるにあたっては捕獲具の構造が重要になるので、必要な部分を簡単に説明する。

 

プラスチックの踏み板は簡単に作って取り付けることができるが、捕獲するたびに齧られるので作り直さなければならない。そこで、厚さ0.5mmの鉄板を用いて少し変わった細工を施した踏板を準備し、3台作った。

 

斜面を覆うような大きさの薄い鉄板で作った踏板に6cmの穴を開け、幅10mm長さ8cmの2本の帯状の板で接続して、捕獲具の上部、端から4本目の線材に引っかけ、金属板が水平となるように取り付けた。6cmの穴は斜面を登ったネズミが鉄板の踏板を潜り抜けるための穴だ。

 

奥向きに少し傾斜を付け、段差を少なくする目的で、端に紙を貼り付けた(写真3)。あと3台はプラスチックの踏み板を水平に取り付けたので、入口が閉じた時の斜面の板との間に2cmほどの隙間がある(写真4)。

 

写真3

 

写真4

 

外籠を加工するに当たっては、高さ5cmの侵入口を作るためにバネのついた片方の入口下部分を幅5cm切り取った。これにより、バネの取り付け部分までの距離が短くなり、バネを押し上げる力が弱くなったので、押し上げて逃げられるのを防ぐために入口下部にL字金具を取り付けてある。

 

3日後の2月20日に点検に行くと、6台のうち3台の中のパンが減っていて、捕獲具周辺に持ち出されていた。捕獲具の中に入ったことは間違いないが、単に持ち出されただけで多くの個体が中に入って食べたとは思えない。この箱の外にあるパンの小片がいつまでもそのままにされているとは思えないので、ネズミたちの一連の行動のうち、途中のある瞬間を観察したことになる。

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捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

山﨑 收一

幻冬舎メディアコンサルティング

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