有名投資家たちがよく使う三つのキラーワード
本を出版して講演を行ったり、コンサルティングを行う有名投資家たちの発言には、いくつか共通したキラーワードがあります。
① 不動産投資は不労所得です!
② 私のやり方を真似すれば必ず成功します!
③ サラリーマンを辞めてリタイアしました!
実はこの三つのキラーワードに、有名投資家たちの嘘が含まれているのです。それぞれ解説しましょう。
① 不動産投資は不労所得です!
有名投資家がセミナーなどでよく使うのは、「不動産投資は不労所得」という言葉です。日本では、家賃収入を「不労所得」といいますが、アメリカでは「受動所得」または「ポートフォリオ所得」という言い方をします。不動産投資をはじめる目的として一番多いのが、この不労所得です。サラリーマンでありながら不動産で家賃収入を得て、やがては会社を辞めて不労所得で生活することを夢見る人がたくさんいます。
不労所得=年金代わりという発想が近いかもしれません。しかし、不動産投資はけっして「不労」ではありません。不労という響きは誤解を招きやすい言葉ですが、最近の新規参入者を見ていると、本当に何もせずお金が入るようなイメージが強くなっていると感じます。当たり前のことですが、手放しで安定的にお金が入ることはありません。
不動産投資では管理運営から修繕、会計といったことまで、すべてをアウトソーシングできる仕組みが整っていますが、その前段階として円滑に運営するためのオペレーションを整えて管理していく作業があります。また、さらなる事業規模の拡大を狙って物件を買い増すときは、最初から仕組みをつくっていく作業が必要です。
仕組みを整えた後は自動操縦で運営するという意味では不労所得ともいえますが、最初からお金を生み出す自動販売機が買えるということはないのです。長期的に賃貸事業としてやっていくことを考えると、不労ではなく受動所得の方がしっくりくるのではないでしょうか。私は「不労」という言葉に惑わされることなく、時間とレバレッジを生かした堅実経営を目指すべきだと思います。
また、融資の特性上、個人の属性で融資をしていることもあり、サラリーマンを辞めたことによって、購入が厳しくなることもあります。すでに購入した物件だけで安定的に家賃収入を得るという考えもありますが、それは間違いです。
不動産投資は出口で初めて利益が確定します。持ち続けている以上は建物が老朽化していきますので、小規模の修繕から大規模修繕なども考慮しなくてはいけません。不動産投資は出口を迎えた段階で資産を組み替える手法が正しいやり方です。
不動産投資の特徴は、レバレッジが効き少ない資金で投資ができることで、将来にわたり購入当時の収入が安定的に入ってくる投資ではありません。安定的に収入が入ってくる投資としては投資信託などを選択されるのも良いかもしれません。
不動産投資とは違いレバレッジが効かないため、ある程度の資金が必要であるためCCR(自己資本収益率)が低くなりますが、換金性は高いため組み替えも容易であるのが特徴です。
② 私のやり方を真似すれば必ず成功します!
二つ目は「私のやり方を真似すれば成功します」という言葉です。初心者がよく誤解してしまうのは、次のようなケースです。「物件を何棟も所有している」「本をたくさん出している」「投資歴が長い」その結果、「すごい・偉い・成功している」そんな風に思ってしまいがちです。
しかし、所有物件を何棟も持っていようとも、キャッシュフローと残債と資産価値のバランスを見なければ、本当に成功しているのかどうかは判別つきません。書籍を出版しているといっても、実際に読んでみると、物件概要や数字について明確に示されていないこともあります。
サラリーマン投資家という言葉がまだ世の中に浸透していない十数年前から投資をスタートしていただけで、実際はそんなに儲かっていないのでは?と思われる人も実際にいます。先駆者という意味では価値があるかもしれませんが、成功を見極めるポイントはどのようにして物件を購入したのか、資産がどのぐらい増えたのかです。
究極的にいえば、物件を売却しない限り、利益を確定することはできないのです。購入・運用・売却―これらを繰り返して資産の組み替えをしながら、結果的にどれだけ儲かったかということが大事なのです。
また、不動産投資における成功の着地点は、人それぞれです。まったく同じ条件の物件が存在しないのと同様に、不動産投資のやり方は多種多様です。有名投資家の手法をそっくりそのまま真似することは不可能ですし、仮に真似することができたとしても、それが自分にとって最良のやり方だとは限りません。
そもそも、その有名投資家が本当に不動産投資の成功者かということを判定するためには、「その人は何で収益を得ているのか」を知る必要があります。
本当にキャッシュフローで生活しているのか。それとも、コンサルティング料や講演料で生活しているのか。それとも、不動産業者や建築業者からの紹介料で生活しているのか。同じようにセミナーや勉強会を行っていても、そこにスポンサーがいるのか、それとも自分自身で開催しているのか――。
最近は、多くの不動産投資セミナーが開催されていますが、「高額ではあるけれど、誠実なセミナー」があれば、「お得なように見えて、特定の物件を売りつけるセミナー」が混在しています。
不動産業者のセミナーでは「騙されないぞ」と警戒する投資家の皆さんなのに、有名投資家のセミナーでは、「自分たちと同じ仲間だ!」と無条件に信じ込んでしまう。私は本当に危険に感じます。もちろん、有名投資家のすべてを指して「人を騙すような悪い人間だ!」と批判するつもりはありません。実際、当社でもお付き合いのある有名投資家さんがいますが、信頼のできる人が大半です。
中には、自分の利益だけを優先する人もいます。世の中に善い人もいれば悪い人もいるように、有名投資家だからといって、全ての人が信頼に足る人間とは限らないのです。
③ サラリーマンを辞めてリタイアしました
三つ目は「サラリーマンを辞めてリタイアしました」という言葉です。これをわかりやすく言い換えると、「不動産投資でサラリーマン年収を上回るキャッシュフローが安定的に得られそうなので、会社を辞めて悠々自適に暮らす」ということです。
投資にはいろいろな種類と特徴があります。不動産投資は数ある投資の一つであって、物件を所有し続けて得られるお金を年金代わりにするような性質のものではありません。例えば退去者が出れば、すぐに修繕を依頼して、入居者の募集をしなければいけません。建物全体のメンテナンスも定期的に必要となります。
このように物件を持っている限り、常に何かしらの労働力を投下しなければ家賃収入は得られないのです。将来的に安定的した収益を得ることを目的とするのではなくて、資産の組み替えを前提とした運用――それが不動産投資なのです。
SNSで憧れの生活を披露したり、楽しく過ごしているように見えても、それは有名投資家のブランディングの一環という可能性もあります。先ほどの不労所得にも通じますが、賃貸業は決して安定的な収入ではなく、物件の出口が決まっていない限りは利益が確定していません。
実際にリタイアしてうまくいっている有名投資家の多くは、今でも物件の売買を繰り返しながら、資産の組み替えを絶えず行っています。つまり、経営者として常にしっかり働いているということです。現場で汗して働かずして、遠隔でコントロールできる、そういった点では確かに不動産投資は場所を選ばず、たとえ遠隔地(海外など)にいても経営することはできます。そうした仕組みを整えられることが、不動産投資における最大のメリットではありますが、それは決して「リタイアして悠々自適」ではないのです。
成功している投資家とは、その仕組みをしっかりとつくり上げ、円滑に経営できている投資家です。あなたも成功したいのであれば、リタイアを目指すのではなくて、有能な経営者を目指しましょう。そして、決して有名投資家の一側面だけを見て判断することはせずに、不動産投資というビジネスをよく理解した上で、何が最適な投資方法なのかを考えましょう。
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